本研究は、看護技術の気管内吸引における吸引圧・吸引時間の指標を作成し、看護技術における吸引方法の新たな提言を検討することにある。吸引圧・吸引時間の指標の作成にあたっては、Ⅰ.吸引圧・吸引時間、吸引量の関係とⅡ.吸引調節技術の動作分析の2側面を検証し、その結果をもとに作成することとした。 最終年度の平成27年度は、前年度までに得られたⅠ.吸引圧・吸引時間・吸引量のデータを分析し、模擬痰の粘稠度別(3パターン)にみた吸引圧、吸引量、吸引時間の関係性を検討した。その結果、カテーテルの太さや粘稠度の違いによる吸引量の差は吸引圧が高くなるほど減少する事が明らかとなった。 Ⅱ.吸引調節技術の動作分析については、実験方法、データ収集方法を検討し、プレテストを実施後、本実験を行った。尚、実験の実施にあたっては、所属する大学の倫理審査を受け、承認を得てから行った。本実験では、吸引経験が少ない10名の被験者を対象に実施した。模擬痰を貯留させたモデル人形に吸引を実施してもらい、吸引技術の動作をビデオ撮影した。さらに、吸引技術の調整等に関する主観的評価について半構成的面接法にてデータを収集した。尚、吸引技術は、口腔内、鼻腔内、気管内吸引について実施した。これらの得られたデータを分析し、吸引調整技術に関する特徴をみいだした。その特徴としては、被験者自身が知覚する吸引時間より、実際の吸引時間が長い傾向にあったこと、吸引総時間のうち痰を実際に吸引している時間の割合は約5~7割であったこと、痰を吸引する過程において痰の粘稠度をある程度予測することができていたことなどであった。 これらの検証結果を踏まえ、指標を作成したが、その活用方法については、今後さらに検証を重ねていく必要がある。
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