本研究の目的は、外国人患者へのケアに伴う日本人看護師の感情体験を通し、外国人患者と日本人看護師間の関係構築プロセスの実態を解明することである。研究方法は、野口・樋口(2010)が示した在日外国人と看護師の関係構築プロセスに着目し、看護師が外国人患者との関わりをためらう段階に焦点を当て、帰納的にアプローチを行った。当初、参加観察を行う予定であったが、自尊心や看護のアイデンティティに関わる負の感情は語られにくいことが予想されたため、調査方法を再検討した。 研究1.日本の看護師による外国人患者への看護の現状を患者の立場から明らかにする 在日外国人22名を対象に、グループインタビューを実施した。1グループ5~6名、在日期間は1~9年、出身国はイタリア、カナダ、韓国、ジャマイカ、タイ、ロシア、ウズベキスタン、中国、トルコ、フィリピン、フランス、マレーシア、アメリカ、ポーランド、インド、カナダであった。インタビューの結果、在日外国人患者は、言語の問題に加え、母国と異なる日本の受診システムにより効率的な受診行動をとることが困難な状況にあることから、言語への対応に加え、日本の受診システムの理解に向けた情報的支援の必要性が明らかとなった。また、日本の医師・看護師と、在日外国人患者との間には先入観に基づくコミュニケーションバリアが存在していたことから、患者への先入観を排した積極的な関わりによってコミュニケーションバリアを解放する必要が示唆された。 研究2.日本人看護師による外国人患者への看護を看護師の感情の視点から明らかにする 外国人患者への看護を経験した看護師を対象に、質問紙による全国調査を実施した。外国人患者受入認証医療施設や在留外国人の多い自治体に設置の病院を中心に、155施設に研究協力依頼を行い、45施設から承諾が得られた。質問紙は1253件配布し、584件を回収、データを分析中である。
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