研究課題/領域番号 |
25670928
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
中山 和弘 聖路加国際大学, 看護学部, 教授 (50222170)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ディシジョン・エイド / 意思決定支援 / 意思決定ガイド / ヘルスコミュニケーション / エビデンス / ナラティブ |
研究概要 |
平成25年度は、以下の1)~4)のプロセスを経てディシジョン・エイドを開発した。 1)ニーズの把握:患者の価値観が決定に影響する場合の患者の意思決定プロセスにおける経験を価値観の対立、情報源の活用、ディシジョン・エイド活用に対するニーズという視点から把握するため、治療選択の経験がある乳がん体験者10名を対象にインタビューを実施した。逐語録より、意思決定の葛藤が生じる価値基準5カテゴリーの抽出、情報源の1つとして体験者の体験談の活用頻度とメリット・デメリットを抽出した。また決定プロセスのニーズとして、ディシジョン・エイド活用のニーズ、情報整理、気持ちの整理の支援ニーズがあることが示された。 2)ディシジョン・エイド(試案)の作成:1)の結果、先行研究などを参考に、ディシジョン・エイド(試案)をオタワの意思決定サポートの枠組みを基盤とし作成した。本研究では、決定に価値観が影響する初期乳がん患者の術式選択を取り上げた。選択肢である乳房温存術(+放射線治療)と乳房切除術における生存率は、初期乳がん患者で同等であるというエビデンスより決定における価値観の明確化が重要であることからこの題材を取り上げた。 3)ディシジョン・エイド(試案)の内容適切性の検討:ディシジョン・エイド(試案)のわかりやすさ、長さなどの内容適切性を検討するため、術式選択の経験のある乳がん体験者14名を対象に、質問紙調査とフォーカスグループインタビューを実施した。また、文献検討より、ディシジョン・エイドの研究課題の1つに体験者の体験談をディシジョン・エイドに含むか含まないかのエビデンス蓄積の必要性が示唆されていることから、本研究で意思決定プロセスと決定の結果に対する体験談を収集し、その効果を評価することとした。 4)ディシジョン・エイドの修正:3)の結果と、医療専門家による内容確認を踏まえてディシジョン・エイドを修正した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ディシジョン・エイド開発のプロセスを経て、ディシジョン・エイドの開発ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の文献検討より、海外では乳がんの術式選択のディシジョン・エイドの開発と評価が複数実施されていること、最新のディシジョン・エイドのシステマティックレビューの結果からディシジョン・エイドの効果として意思決定における知識向上、葛藤の低下、決定プロセスと結果に対する満足度の向上があげられていることが明らかにされている。かつディシジョン・エイドの介入は害にならないという結果があることから、わが国での導入推進のために当初予定していたプロセス評価(修正版のインターネット公開と内容適切性の検討、feasibility test)は実施せず、アウトカム評価を実施することに変更した。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究開始当初の計画時と比較し、海外の研究が早いスピードで発展し蓄積されていることがわかった。そのため、先行研究を土台にすることで本研究をさらに先に進めることができると判断し、計画の目標であったプロセス評価を縮小しアウトカム評価に進むことに計画を変更したため次年度使用額が生じた。 ディシジョン・エイドと、効果の検証のための質問紙調査票の印刷、研究協力者への謝礼、研究協力者の採用などアウトカム評価にかかわる費用に充てる。また、本研究の実施において、Ottawa Hospital Research Instituteより提供されているディシジョン・エイドの開発と評価のためのガイドおよびInternational Patient Decision Aids Standards Collaborationから提示されたディシジョン・エイドの質を評価する指標を参考に、我が国でもディシジョン・エイドの開発と評価の研究を促進するためのガイドブック作成の費用に充てる。
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