研究課題/領域番号 |
25670930
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
小宮 浩美 武蔵野大学, 看護学部, 講師 (10315856)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 実践適用 / インプリメンテ―ション / 地域生活移行支援 / 精神科看護 / プロトコール / 標準化 / 知識移転 |
研究概要 |
(1)研究計画の変更 平成25年度は、退院支援プロトコール試案の作成、退院支援の満足度指標の開発を計画していたが、エンパワーメントスケールを以て退院支援の評価が検討できると判断し、退院支援の満足度指標は作成を取りやめた。一方で、最終年度の研究計画に必要な実践適用モデルについて、国内外の論文を検討することを本年度の研究計画に追加した。 (2)本年度の研究成果 その1 退院支援プロトコール試案の作成 退院支援は医療者側からの用語の印象が強いため、地域生活移行支援と改めた。また、地域生活移行には日常生活能力に対する援助やケアマネジメントだけでなく、患者をエンパワーメントすることが重要である。よって、プロトコールの理論的基盤としてエンパワーメント理論を採用した。 (3)本年度の研究成果 その2 実践適用モデルの検討 プロトコールの実践適用は、新しい知識を実践に適用することを意味するが、知識の適用に関する概念は日本で未整理だったため、海外論文を検討し、概念整理を行った。また、実践適用に関連するモデルは日本ではまだ開発されていなかったため、海外論文を取り寄せ、Iowaモデル、AHRQモデル、PARiHSモデル、Stetlerモデル、Davisモデル、RNAOモデルを検討した。その結果、基盤となっている理論が網羅されていること、知識を行動に転換することに焦点が当たっていることから、RNAOモデルを採用することにした。このモデルは、適用する知識の問題/課題の特定から、利害関係者や資源の同定、知識利用の障害要因・促進要因の査定、戦略と介入の選択と適合、知識利用のモニターとアウトカム評価、知識利用の維持からなる6ステップで構成されており、それぞれのステップにおいて必要な行動指標が明記されている。これを最終年度の研究の枠組みとし、データ収集内容と方法を洗練することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、精神科看護の質向上のための地域生活移行支援プロトコールを開発し、精神科病棟での実践適用のプロセスを明らかにすることが目的である。質の向上には、看護の標準化が必要であり、標準化とはベストプラクティスに一致するように作成された容認できるケアの指標(プロトコールやガイドライン)を用いることであり、つまり実践適用である。しかし、実践適用の構造やモデルは日本では検討されていないため、海外モデルを援用して、日本の実践適用の経験を持つ看護師の意見を基にこのモデルに修正を加え、日本で活用可能な実践適用指針を作成することを計画に追加した。 (1)地域生活移行支援プロトコールの作成 地域生活移行支援プロトコールの試案のコンテンツのうち4割程度は作成できたが、教育媒体をコンピューターとし、今後はプログラミングの専門家と共に作成していく計画である。また、精神科病棟でのパイロットスタディの前に、地域生活移行支援プロトコールの試案を退院調整の認定資格を持つ精神科看護師のエキスパートパネルにかけ、洗練することを平成26年度の計画に追加した。 (2)日本の精神科病棟での実践適用指針の作成 平成26年度は、日本の精神科病棟における実践適用の体験がある看護師に、地域生活移行支援の知識を実践適用した体験についてインタビューを行い、日本語に訳したRNAOモデルの内容と比較検討し、モデルに追加・修正を行い、日本の精神科病棟向けの実践適用指針を作成する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、地域生活移行支援プロトコールの作成および洗練化とパイロットスタディ、日本の精神科病棟での実践適用指針の作成を予定している。 (1)地域生活移行支援プロトコールの作成 地域生活移行支援は多様な幅広い援助項目を含むため、紙媒体ではなく、コンピューター上で使用可能なソフトを開発することで修正が行いやすくなると考えている。これには、e-learningシステムの開発経験のある研究者を研究協力者として加えること、プログラミングを行うアルバイトを雇用する計画である。 (2)実践適用指針の作成 日本の精神科病棟における実践適用の体験ついてインタビューする対象者の候補はリストアップ済みである。RNAOモデルの日本語訳を外部に委託する。
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次年度の研究費の使用計画 |
プロトコールの洗練のためのエキスパートパネルの開催が試案の作成が遅れたことにより、平成25年度内に実施できなかったため、専門家への謝金、交通費が未使用となった。また、プロトコールのコンテンツ作成が4割程度しかできていないため、関連書籍の購入も未実施となった。 平成26年度に、エキスパートパネルの開催、パイロットスタディの実施を行うため、専門家や対象者への謝礼、交通費に充てる。また、プロトコール作成、研究方法などの書籍の購入に充てる。
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