本研究の目的は看護師と看護基礎教育を受けている看護学生との看護援助時の注視点の違いから視線運動と行動・動作との関連を分析して学生の不安全行動を特定し、教育効果を確認することである。これまでの調査において明らかになったことは、患者に清潔援助を行う際に、看護師の注視点と看護学生の注視点には違いがあり、行動にも違いがみられることであり、さらに看護学生の不安全行動が数点特定されたことである。 看護師の視点はこれまでの調査でも明らかになっていた結果と同様に、患者を中心にしていくつかのポイントに絞られ、注視点をポイントで移動していくという特徴がみられた。また、看護師間で注視するポイントには共通点がみられ、あるポイントを注視した後には、ある一定の行動を行うという注視点と行動の関連性もみられた。注視点はまた、看護師が患者の安全を守るために配慮した点に向いていた。 看護師の結果に対して、看護学生の調査の結果は従来の調査と同様に、ポイントが一定せず、ベッドの広範囲に流れており、壁や窓、棚にも視線を移し、注視時間は看護師に比較して短時間であった。その注視点は学生によって一致しているポイントもあったが、一致しないポイントもあり、学生が患者の安全を守るために配慮した点として答えた内容と視線は関連性のない場合もあった。さらに看護学生の不安全行動のいくつかが明らかとなった。この結果は看護学生は患者の安全を前提に看護技術を学んでいるが、実際の患者を前にすると思いもかけない行動をとる可能性を示唆する内容であった。
|