研究課題/領域番号 |
25670940
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
溝部 佳代 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (70322857)
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研究分担者 |
横澤 宏一 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (20416978)
芳賀 早苗 北海道大学, 保健科学研究院, 研究員 (60706505)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 看護 / ストレス / 絶食 / 情意刺激 / 脳磁図 |
研究概要 |
目的:ストレスが身体機能に与える影響を評価することを目的として、今年度は絶食ストレス下で情動的-快(P)/中性(N)/不快(U)-な画像刺激を与えられた時の脳磁図、脈拍数、酸素飽和度(SpO2)、主観的快強度(視覚的アナログ尺度:100mmVAS)を計測し、平常時と比較した。 方法:被験者は21.4±1.2歳の健常大学生、男女各10名であった。平常時をControl、前夜21時から実験終了まで12~15時間絶食した状態をFastingとした。IAPS(Florida Univ.)から画像水準(P/N/U)ごとに各8枚の画像を選び、1画像あたり10回をランダム順に呈示した。脳磁場解析では、視覚誘発反応に感度の高いセンサーを被験者ごとに10個ずつ抽出し、α帯域脳律動振幅のセンサー平均について、画像呈示前を基準として呈示中の減衰率を求めた。100mmVASは各画像に対する快強度について実験直後に質問紙により回答を得た。 結果:条件要因(Control/Fasting)×画像水準(P/N/U)の2要因反復測定分散分析を行った。100mmVASでは交互作用(p=.047)があったが、Control、Fastingとも全画像水準間で有意差がみられ、画像が情動的に認知されていることが確認できた。脈拍数・酸素飽和度は有意な結果はみられなかった。一方、α帯域脳律動振幅は、画像呈示直後の時間帯(呈示後0.5-1.75sの平均)で交互作用(p=.027)がみられ、ControlではP・UがNに比べて有意に低かったのに対し、FastingではPの低下はみられなかった。すなわち、平常時では快/不快いずれの画像もα帯域脳律動を抑制するが、絶食ストレス下では快画像による抑制が生じないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画通り、ストレスが身体機能に与える影響を捉えるために、複数の評価指標を選択し、脳、自律神経系活動および主観的評価について計測し、平常時における生体反応の特徴および評価指標の有用性について検討した。結果、平常時では、情動的な刺激(快/不快)に対するα帯域脳律動振幅が、中性的な刺激と比較して明確に異なる反応を示し、本実験で用いたストレス刺激セットが情意刺激として生体に有効に作用していることが確認できた。また、情意刺激直後の短い時間帯において、情意刺激に対する生体反応は応答していること、脳磁図計測によるデータにおいて有意な結果が得られることが確認できた。 これら実験装置の完成および平常時におけるストレス応答の結果を踏まえ、実験の第2段階として、ストレス下において同刺激を与えた時の影響について検証した。まず本年度は、絶食状態における条件下で検証を行い、平常時との比較を行った。その結果、同じく情意刺激直後の短い時間帯において、情意刺激に対する生体反応は応答していること、脳磁図計測によるデータにおいて絶食下における特異な反応を見出すことができた。以上より、初年度および一部次年度における実験にも着手することができたことから、本研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
絶食ストレス下で情動的-快(P)/中性(N)/不快(U)-な画像刺激を与えられた時を実験条件として、データをさらに収集する。 具体的には次の2点を予定している。 ①絶食時における特異なα帯域脳律動振幅の変化のメカニズム解明の一助として、絶食時ではなぜ異なる応答がみられるのか、その成立要件を明らかにするための実験を行う。 ②ストレス時におけるケアの可能性を探るために、絶食時におけるストレス応答を平常化させるための介入条件を探るための実験を行う。 次年度は最終年度であるため、以上の結果に基づき、絶食時におけるストレスマネジメント方略について検討し、看護への示唆を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験補助に対する人件費として月額約7万円支出している。人件費は勤務の翌月に支払われるため、当該助成金は25年度最終月(26年3月分)の人件費に該当する。 使用額については予定どおりである。 次年度は、実験における消耗品や実験補助者の人件費、被験者への謝礼や学会出張費などが主な支出予定である。また、次年度使用額の73,234円は、25年度最終月(26年3月分)における人件費として使用するため繰越した。
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