最終年度は、研究目的を「ホルモン療法を受ける乳がん患者に適用できる主観的認知機能評価尺度の開発」として、尺度開発のプロセスに沿って3段階の調査を実施した。 第1段階の調査では、初年度に作成した「注意・集中」、「情報処理」、「言語流暢性」、「短期記憶」、「実行機能」の5領域からなる50項目の尺度原案をもとに、ホルモン療法中の乳がん患者10名を対象に表面妥当性の検討を実施した。対象者の意見をもとに意味のわかりにくい項目や他に必要となる項目の削除、修正、追加を行った。第2段階の調査では、専門家7名による内容妥当性の検討を行った。項目の妥当性は、尺度のカテゴリと各質問項目との関連をI-CVI(the item-level content validity index)を用いて分析し、質問項目を精錬させ尺度案30項目を作成した。第3段階の調査では、ホルモン療法中の乳がん患者876名を対象に、尺度案の信頼性および妥当性の検討を行った。近畿圏内の患者会、クリニック、病院にて無記名自記式質問紙を配布、返送は対象者による郵送とし、返送をもって同意を得たものとした。510名から返送があり、有効回答数は452名(有効回答率51.5%)であった。そのうちホルモン療法をはじめてから認知機能低下の症状を一つ以上経験している者について分析を行った。探索的因子分析の結果、3因子が抽出され、各因子のクロンバックαが0.8以上と、本尺度の構成概念妥当性、内的一貫性が確認された。
|