研究実績の概要 |
本研究は継続的な血糖測定を可能とする新しい血糖測定システムContinuous Glucose Monitoring System(CGMS)を糖尿病患者教育支援に適応できるガイドライン作成に臨み、示唆を得る目的で実施した。研究方法はミックスメソッドを用いた。 検証(1)はCGMS装着体験から導かれる糖尿病患者の想いを明らかにするために、6名の2型糖尿病者の語りをGrounded Theory approachにて分析した。その結果、CGMS はどのような食物が血糖値上昇に影響するのかを可視化できることから、自らの病に真摯に向き合う機会となり、偏った食行動の気づきを得えていた。気づきは改善へのモチベーションを高めていた。 検証(2)はCGMS前後で糖尿病療養者の負担感情変化を糖尿病問題領域質問票Problem Areas in Diabetes Survey(PAID)で測定した。分析対象は20名である。PAIDの点数変化に影響すると考えられる糖尿病罹病期間、職業の有無、治療内容、合併症を含む患者背景因子を検討した。また、PAID回答分布を前後で比較した。その結果、CGMS前のPAIDの総点数の平均は25.6±16.2、CGMS後21.8±14.9と、有意ではないものの軽減傾向にあった。CGMS前のHbA1cは8.2±2.2%、CGMS後7.8±1.4%と、有意ではないものの改善傾向にあった。PAID各項目と患者背景因子のうち、職業を有する群において「糖尿病の治療法」に対する負担感情が有意に軽減されていた(p<0.05)。CGMS前のPAID回答分布は「合併症」が最も多く(5名,25%)、CGMS後は「低血糖」が最も多かった(5名, 25%)。CGMSの情報は有職者の負担感情を軽減させることが示唆された。CGMS後は低血糖への負担感情の可能性に配慮した関わりが必要といえる。
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