本研究の目的は、若年女性がん患者が「妊孕性温存に関する理解と意思決定支援を促進する統合ケアモデルの開発」を行うことである。最終年度は、妊孕性温存に関する理解と意思決定支援を促進するケアモジュールの要素を次のように抽出・構造化した。(1)情報リソースモジュール (2)ニーズアセスメントモジュール (3)選択肢とビジョン検討モジュール (4)照会と連携モジュール。次いで、当事者によるタスクフォースを公募し、ケアモジュールの内容妥当性について検討を行った。その結果、ケアモジュールの要素として、次の内容を包含する必要性が指摘された。(1)情報リソース:がん治療と不妊治療が並行してどのように実施・評価・フォローアップされるかに関するオーダーメードの行程、(2)ニーズアセスメント:公平で的確なニーズ把握に向けた医療者のスキルアップ(例:不妊治療に対する医療者のステレオタイプな見方の是正など)、(3)選択肢とビジョン検討:自分自身のライフコースの可能性、蓋然性に関する葛藤を考慮した相談・支援の重要性、(4)照会と連携:限られた時間の中で最善のがん治療と不妊治療を可能するためのケアマネージャーの必要性。 以上、ケアモジュールは、若年乳がん女性はがんと妊孕性の2つの課題への支援に留まらず、若年乳がん女性の葛藤を支え、また複雑な不確かさを乗り越えることを支援することに重点を置くべきことが明らかになった。情報の質、量、タイミングの判断、提供や生き方など内省する過程に寄り添い、心理的支援を行うこと、組織を超えた多職種チームの連携、協働によって支えることは、女性が決断した道を歩みだすことを促すことが示唆された。
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