研究実績の概要 |
本研究の目的は,周術期乳がん患者の体重増減が術後の続発性リンパ浮腫発症におよぼす影響に着眼した自己管理行動を遂行するプログラムを開発することである。2014年度は以下の2点を実施した。 1 質的統合のまとめおよび結果の公表 第一段階では,乳がん術後に続発性上肢リンパ浮腫を発症した患者の体重増減と自己管理行動について明らかにすることを目的とし,49から76歳の乳がん術後続発性リンパ浮腫患者8名に半構成的面接法にてインタビューを実施した。その結果,「術式の理解」や「補助療法の理解」についてはすべての参加者が認識していた。一方,「リンパ浮腫の危険因子」,体重増加がリンパ浮腫の危険因子となることについては認識していない者が多かった。「体重管理」については、体重増減に関する自覚をもち,定期的に体重測定をしている参加者は少数であったが,体重変化が1~3Kg以内であった。また,体重変化が少ないものは,体重変化や上肢の違和感などを敏感に察知し,自己管理行動がとれていた。一方,体重変化の大きいものは,体重変化に関心がなく,運動習慣はあったもののその他の自己管理行動に結びついていなかった。また,「リンパ浮腫の前兆」を自覚しても,医療機関への受診行動はとれていないことがわかった。さらに,体重増減の前後で「ホルモン療法による影響」が示唆され,ホルモン剤投与中の体重変化とリンパ浮腫について,患者の日常生活の実態調査が必要であることが示唆された。 2,量的統合に向けた準備 質的統合の結果より,ホルモン療法を受けている期間中の体重変化とリンパ浮腫発症および体重変化に係る日常生活の実態調査の必要性がある。さらに,リンパ浮腫発症リスクの高い肥満患者に焦点化した実態調査を実施する必要があると考え,具体的に倫理委員会の申請,研究実施施設との調整段階である。
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