研究課題
日常生活の中で褥瘡の発生につながりやすい車いす乗車時及びトイレ動作について圧力センサーによるモニタリングを行った。便座の形に沿って配置でき、人体に接触しても影響のない高分子厚膜フィルムデバイスを用いた測定装置を製作した。車いす乗車時については、シート状のセンサーを用いた。製作したセンサーの安全性確認のため、脊髄損傷者の看護に携わった経験のある看護師を対象とした。研究協力者は4名。洋式トイレでトイレ動作を行った。洋式トイレに座る姿勢、位置、体幹バランスにより褥瘡発生のリスクが変わってくることが考えられた。下衣の脱衣の際、足を片方ずつ持ち上げる動作により、持ち上げた足とは反対側の坐骨部に集中して強い圧がかかっていた。体の前方から座薬を入れる場合、便座に深く腰掛けることで、尾骨、仙骨部が便座の縁にあたり、非常に高い圧を示した。便座との間で皮膚がずれ、それを繰り返すことで発生機序の一要因となりうることが考えられた。便座上で前傾、前屈姿勢をとることで、大腿全体に圧が分散しており、局所に高い圧は観察されなかった。車いす上で前屈、プッシュアップ、上体を反らせる、左右への体重移動での除圧を実施した。上体を反らせる動作では比較的除圧が行えていた。測定の終了後、脊髄損傷者に対する褥瘡予防に関する指導内容等についてインタビューを行った。褥瘡予防プログラムの主な内容は、体圧分布状態の理解、動作による体圧変化の確認、効果的な除圧姿勢の確認と指導、褥瘡予防に関するスタッフ教育とした。実際の動作と連動した圧の変化をモニターで見ることで、体幹バランスや動作により圧のかかる位置等を視覚を通して理解できることから、除圧や姿勢、動作の指導効果が期待できる。また、個別的な褥瘡予防指導に役立てることができる。今後、脊髄損傷者に対するモニタリングを実施、プログラムを実際に提供し、有用性や効果を評価する必要がある。。