1.概要:パートナーからの暴力(Intimate Partner Violence: IPV)被害妊婦に対する周産期ケアプログラムの開発・評価を目標に、最終年度ではIPV被害経験を持つ母親を対象に、医療現場で行うIPV被害妊婦への支援・介入に関するニーズ調査を実施した。その調査結果を参考に、IPV被害妊婦に対する周産期ケアプログラム案を作成し、助産師5名にフォーカスグループインタビューを実施、ケアプログラム案の実施可能性や臨床応用の検討を行った。 2. 研究成果:平成25年度は、IPV被害者・支援者9名のインタビュー調査を実施、IPV被害女性の食事量低下・睡眠障害、抑うつ・不安感等全体的な生活習慣・精神的健康悪化が示唆された。平成26年度は都内医療施設で妊婦830名を対象に縦断調査を実施し、IPV被害妊婦の低い全体的健康感・日常役割機能、痛み、高い抑うつ・不安等が明らかになり、IPV被害妊婦への生活・心理面を改善する包括的なケアプログラムの必要性が示唆された。最終年度は、IPV被害経験を持つ母親31名を対象に、妊娠期ケアのニーズ調査を行った。結果、妊娠期にIPV被害を受けた母親は21名(67.7%)で、その内医療者に相談した者は2名(9.5%)のみであった。医療者によるIPV被害妊婦への支援は、全員(100%)が「必要」と回答し、具体的な支援内容はIPVスクリーニング(71.0%)、気持ちの傾聴(67.7%)、IPV知識の提供(58.1%)、生活相談・指導(35.5%)等が多かった。以上の結果から、他職種・地域連携を基盤とするIPV被害妊婦に対する擁護的介入(暴力発見・情報提供等)・心理介入・生活指導を包括した新ケアプログラム案を作成した。更に、助産師5名にフォーカスグループインタビューを実施し、ケアプログラム案の実現可能性や協働支援システム構築の必要性等の臨床応用の示唆を得た。
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