研究実績の概要 |
近年増加傾向であるシングルマザー世帯の約80%は離婚を決意し,一人で子どもを育てようと決意した親である。しかし,シングルマザーにとって子どもの養育は大きな悩みであり,思春期の子どもをひとりで養育することは,特に大きな重荷やリスクになっている。本研究では,①子どもが思春期を迎える「家族の発達危機」を,シングルマザーがどのように乗り越えていこうとしているのか,また乗り越えてきたのかの体験を明らかにする。②シングルマザーの「生きる力」の源泉について考察し,シングルマザーに対する支援の方法を明示する。本研究の結果はシングルマザーとその家族に関わる保健医療・教育・福祉関係職種への支援資料として活用でき,具体的な支援方法の指標となる。さらには,面接による内省はシングルマザー自身にも「生きる力」を与えるものとなると予測される。 方法:シングルマザーの首尾一貫性(SOC :Sense of Coherence尺度:生きる力を示す尺度)を用いた質問紙による量的な分析と,ナラティヴ・アプローチを用いて得たデータを質的記述的分析を行い検討した。対象者は,【子どもが思春期の母親】8名,【子どもが思春期を終えた母親】8名の計16名とした。 結果:【子どもが思春期の母親】・【子どもが思春期を終えた母親】ともに首尾一貫性得点の割合は,60%以上と高い得点であった。其々の母親は,家族の発達危機に対し,『周囲の力をかりる』という周囲に助けを求める力を持ち,『子どもの将来への願い』・『自分自身の展望』・『自分の成長の承認』を支えに,『子どもと対峙する』,『自分の力を信じる』という主体的な子育ての力を持って日々の生活を送り,『ここまで育てた誇り』を得ていた。 シングルマザーにはこの力の源泉への支援(例えば,決心を支える,躊躇なく助けを求める,承認を得られる,未来を描ける等)が重要であると考える。
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