本研究の目的は訪問看護場面における空気の発生状況を調査することから療養生活の場にある「空気」の正体を明らかにし、訪問看護師が有する「空気を読む」能力の全体像を解明することに挑戦することである。療養生活の場にある「空気を感じたことがある」という経験を持つ訪問看護師を対象とし、2回のグループインタビューを実施した。 研究協力の得られた訪問看護師は15名(うち、2回のインタビュー協力者は11名)であった。第1回グループインタビューの結果、療養者と家族の生活している家の中、担当者会議、退院調整会議などの場所に空気が存在しており、療養者自身、家族自身、訪問看護師自身が空気を持っていることがわかった。また、訪問看護師は療養者への毎回の訪問で空気を感じており、特に療養者と家族が訪問看護師に対して何を求めているのかわからない初回訪問などでは、訪問看護師の空気は出さず、療養生活の場の空気を積極的に感じ取に行く、訪問看護師自身の感情が優位になる訪問などでは、訪問看護師の空気が療養者と家族に伝わってしまう、訪問の回数を重ね言葉がなくても訪問看護師と療養者の気持ちが通じたと感じる場面などでは空気と一体になったと感じるなど、空気の質の変化を繊細に感じていることが語られた。これらのことより、療養生活の場にある「空気」には、療養者と家族が言葉にはならない/言葉では伝えられないが、訪問看護師にわかってほしい内容が含まれていると考えられた。さらに、療養生活の場にある「空気を読む」能力は、訪問看護師には必須の能力であり、空気を読んだうえでどのように対応するか、までが含まれていることが明らかとなった。 今後は、第1回、第2回のグループインタビュー結果を統合し考察を深め、量的な調査も合わせ、訪問看護師が有する療養生活の場にある「空気を読む」能力の全体像を構造的に示すことを目指していく予定である。
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