研究課題/領域番号 |
25670990
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
真田 弘美 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50143920)
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研究分担者 |
須釜 淳子 金沢大学, 保健学系, 教授 (00203307)
紺家 千津子 金沢医科大学, 看護学部, 教授 (20303282)
村山 陵子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10279854)
森 武俊 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20272586)
峰松 健夫 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00398752)
飯坂 真司 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40709630)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スキンテア / 高齢者 / テーラーメード |
研究概要 |
H25年度の目的は①有病率並びに発生率を明らかにし、②表皮、真皮、皮下組織の皮膚特性に着目したスキンテア発生リスクを同定することとした。 ①では、療養型病院1施設に入院中の全患者を対象とした横断研究により有病率を推計した。発生率については、3ヶ月間の前向きコホート研究を実施し、創傷看護の専門家が対象者の四肢の皮膚を観察した。スキンテアの有病・発生の関連因子をロジスティック回帰分析により検討した。有病率調査では410名が対象となり、スキンテア有病率は3.9%であり、半数が前腕内側であった。68.8%がカテゴリー1bであった。スキンテア保有群と非保有群に全身要因の差は認められなかった。発生率調査では、368名が初回および3ヶ月間後の調査に参加した。14名がスキンテアを発生し、累積発生率は3.8%であった。半数が右前腕外側に発生しており、下肢には3名のみ発生していた。初回時点でのスキンテアの保有およびブレーデンスケール得点が有意に発生に関連していた。 ②では、スキンテア発生リスクとして加齢に伴う表皮、真皮、脂肪組織の構造・機能などの皮膚特性の変性に着目した。デザインはケースコントロール研究であり、対照群はケース群と属性をマッチングさせた。皮膚形態の構造、超音波検査による真皮の構造と厚み、角質水分量、経皮水分蒸散量、皮膚pH、真皮水分量を測定した。真皮蛋白質をSkin blotting法により同定し、表皮基底層の構成蛋白質、炎症マーカーを評価した。スキンテア保有群の非損傷部位では、非保有群に対して、超音波画像上の真皮のlow-echogenic pixelsの増加、type IV collagen、matrix metalloproteinase-2の低値、tumor necrosis factor-αの高値が確認され、リスクファクターとして日光曝露の影響が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、療養型病院1施設においてスキンテアの有病率及び発生率調査を実施した。調査施設の確保、倫理審査などの諸手続き、データ収集は順調に実施された。収集したデータについては解析を終え、結果を論文として投稿中であり、1編は掲載に至った。また、測定機器や蛋白質解析を用いた発生リスク要因に対する調査を並行して実施し、当初の計画通り、必要な機材の調達を行った。現在、解析を終え、結果を有病率調査と合わせて論文投稿している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、①全国有病率調査と②前年度の調査結果からスキンテアの発生を予防するプロトコルの開発を目指す。 ①では、まず、サンプルサイズ設計、候補調査項目選定のためのプレ調査を行う。調査準備として、研究計画書の作成、調査項目の選定、調査協力病院のリクルート、倫理審査等の手続きを実施した。研究デザインは多施設横断調査であり、機縁法にて皮膚・排泄ケア認定看護師を調査者としてリクルートし、各皮膚・排泄ケア認定看護師の所属する病院・施設において、特定の1日に入院する患者全数を有病率調査の対象とする。調査項目は、患者特性(全身状態、疾患、ADL、皮膚疾患)、スキンテアの発生状況(患者の行動場面、看護師のケア場面、病棟)、創の状態(深さ、部位、サイズなど)、創局所処置、施設情報(施設種類、病床数、在院日数、予防対策の現状など)を予定している。プレ調査をもとに、サンプルサイズを設定し、全国の皮膚・排泄ケア認定看護師を対象とし、都道府県別の登録人数に比例したクラスターサンプリングを実施する。研究方法等はプレ調査に準ずる予定である。有病率は、都道府県別、施設種類(大学病院、一般病院、療養型病院など)、病棟別に算出する。また、スキンテア保有患者のリスク因子、ケア要因等の該当率を算出する。 ②では、まず昨年度の調査で明らかになった皮膚脆弱性以外に、スキンテアの形態に基づいた外力要因の抽出を試みる。研究デザインは質的研究であり、創部のスケッチから形態を分類し、外力の大きさ、方向性、関連するケア要因などを推定する。これらより得られた発生リスク要因に基づき、皮膚特性のアセスメント技術並びにそれに対する介入技術を検討してプロトコルを開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
有病率調査の結果、単一施設のみではなく、全国規模の有病率調査及びリスクファクターの探索が必要となり、研究計画を一部変更した。そのため、新たに調査施設をリクルートし、研究開始の調整、手続き等の関係で、一部の調査機器・物品の手配の時期を次年度に移行することとなった。 今年度未使用分について、準備中の実態調査の消耗品の購入にあてる予定である。
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