本研究の目的は、日本の文化的背景を考慮した精神障がい者のセルフケア能力を査定する質問紙を開発し、その信頼性と妥当性を検討することである。 計画としては「①質問紙作成」と「②質問紙の信頼性・妥当性の検討」の二段階であり、最終年度は②を実施した。具体的には、①で作成・修正した39質問項目の質問紙に関し、地域で生活している統合失調症者108名を対象に調査を行った。その結果、39項目のCronbach α係数は0.91であり、一定の内的一貫性が確認された。また、当質問紙とセルフケア行動の総得点およびGHQ30の総得点には統計的に有意な相関がみられ、併存的妥当性が確認された。 今回開発した精神障がいを持つ当事者のセルフケア能力質問紙は、更に妥当性を高める必要はあるが、本質問紙を使用することで、セルフケア能力向上を目指した看護援助による効果を測定する際、援助者による行動評価だけではなく、本人がどのようにセルフケア能力を認識しているのかという主観的なアウトカム指標として活用できるとともに、当事者が自己記入することで、当事者自身が自己の状態を客観的に把握する自己モニタリングに活用できるのではないかと考える。
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