病院以外の介護保険施設、ホームホスピス、在宅等、高齢者のあらゆる暮らしの場において、死亡した約200名の高齢者を対象とし、死亡前5年以上にわたって記録された月次の体重からBMI(Body Mass Index、体格指数)について、データを収集・分析した。また、同様に毎日提供されている食事量(kcal)から実際に摂食された食事量(kcal)を算出するとともに、食事以外に摂取された日々の水分量から、月次の平均食事摂取量(kcal)および水分摂取量を算出し、BMI値の推移と共にデータ分析を行った。さらにケアギバーらにより飲食に関する記録に記載されたキーワーズの変化について、データを収集・分析した。 その結果、死亡した高齢者において、死亡5年前より時間の経過とともにBMIの平均値は減少し(p<0.001)、死亡直近時のBMIの平均値は「やせ」の基準値以下の16.5(±3.5)であることが明らかとなった。 また食事摂取量は死亡約6ヵ月前から前月に比較し有意に減少し(p<0.001)、水分摂取量は死亡約1ヵ月前から前月に比較し有意に減少した(p<0.001)。 さらに、死亡約6ヵ月前より「口腔内の溜め込み」、「ムセ込み」といった嚥下困難に関するキーワーズ、約1ヵ月前から「摂食拒否」、「欠食」といったキーワーズが各々前月と比較し有意に増加した。 これらの死亡前の推移から、BMIに加え食事摂取量や水分摂取量の減少は、死亡時期の推定のエビデンスになると考えられた。また、それらの減少と共に観察記録され死亡前に頻出するキーワーズから、看取りの時期における適切な食事量や水分量を裏づけるエビデンスとなることが示唆された。
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