研究課題/領域番号 |
25671009
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
伊東 美緒 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (20450562)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 認知症ケア / 夫婦 / インタビュー / 回想法 / ライフストーリーブック |
研究実績の概要 |
在宅で介護を行う家族のうち、配偶者が主な介護者である割合は、ここ10年間、全体の約25%前後で推移している。配偶者が介護にあたるケースは多いにも関わらず、配偶者を含めた夫婦を対象とした研究は少ない。そのため、本研究では、認知症の人とその配偶者を対象として、ライフストーリーを聞き、ライフストーリーブックを作成して提供することが、夫婦の関係性に与える影響を明らかにすること、同時に、専門職が関わる際の夫婦を単位としたケアのヒントを探ることを目的として実施している。 初年度に加えて、平成26年度は3組のインタビューを実施することができた。アメリカの共同研究者らとの比較研究としては、より多くの対象が必要であり、病院の掲示板や板橋区、港区の介護家族会、オレンジカフェなどに行き、リクルート活動に力を入れたが、多くの夫婦の同意を得ることはできなかった。そこで、アメリカの研究チームと検討し、インタビューの内容をすべて翻訳することによって、共同で質的研究も並行して行えるようにした。 平成26年度の3組については、認知症症状が急激に進行したケースで介護負担感が8点上昇たが、ライフストーリーブックを作成することに強い関心をもったケースでは介護負担感が3点から0点に低下した。しかし3ケースすべてにおいて、インタビューの中で介護者の介護に関する肯定的な発言、被介護者の感謝の表現が聞かれ、関係性の改善が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リクルートした対象者の数が予定よりも少ない。 対象となる夫婦のリクルート活動は初年度よりもさらに力を入れて実施したが、なかなか夫婦の同意を得ることができなかった。地域包括支援センターの担当者、施設管理者、認知症カフェ運営者など、接触することのできたあらゆる人の力もお借りしたのだが、インタビューを実施する場所が自宅であれば掃除が大変であり、外であれば夫婦ででかけるのが大変という理由があると考えられる。 しかし、家族会などに参加してリクルート活動を行ったところ、「仕方ないから一緒にすんでるのに、昔の写真を一緒にみるなんて絶対嫌」、「もっと元気なときだったらやりたかったけど、今は認知症が進んでそれどころではない」などのコメントをいただき、ライフストーリープロジェクトを実施することが適切ではない夫婦の特徴を整理することができた。 アメリカの研究チームと相談して、日本のインタビューを翻訳して質的研究も行えるように方針を変更して、補完することにした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年では、可能な限り対象夫婦を増やしてインタビューを実施しながら、これまでに得たデータを量的・質的に分析し、論文を作成する。認知症の軽度の人にアクセスできるよう、物忘れ外来を実施している病院の掲示板や自治体の広報誌などへの掲載も検討している。 これまでに得られたデータをもとに、International Association of Gerontology and Geriatrics Agian Regionにおいて、 同様の取り組みを行っている日本、アメリカ、韓国の研究チームが合同シンポジウムを行うことも決定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度に、想定したよりも対象者を多く集めることができなかったことから、約65万円の持越しが発生した。平成26年度は、データを管理するためのノートPCの購入や翻訳を中心として、年間の支給金額を上回ったものの、平成25年分の持越し予算を消化するには至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は、共同研究チームとの論文作成相談および学会発表において、旅費を多く必要とする。また対象者を継続的に探し、インタビュー調査を実施するため人件費、および分析指導における謝金も必要となる。 最終年度に必要な経費として、約130万円は有効に活用していきたい。
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