研究課題
研究の目的は、今日的な社会状況に照らした新たな保健師活動の指針を得ることであり、異なる地域性を持つ地区に対する地域保健活動の現状を把握して類型化し、自治体の属性や保健師の考え方との関連を調べることであった。当初の計画では、まずどのような地域性の地区があるかの質問紙調査を行うことであったが、質問紙の選択肢を考えるための聞き取り調査を先行させることとし、平成25、26年度に全国16市町の保健師に対する訪問聞き取り調査を行った。暫定的分析の結果を全国調査用の質問紙として作成たが、27年度(最終年度)に丁寧に分析した結果、高層マンションや新興住宅地において従来の活動方法では対応できない状況が生じていることや、どのような地域においても住民の考え方・保健師に課せられた仕事・自治体組織の変化が根底にあることが明らかになった。16市町の調査では全国の状況に一致するものか判然としないため、地域特性を6つに分類し、地域活動事業の優先度や保健師の活動方法等との関連を調べることができるように質問紙を作り直し、全国調査した。効率よく多様な地域性の情報を得るため、人口規模10万人以上の市を対象に質問紙を配布し、回答の回収率は40.1%であった。回答した市の58%に高層マンション地区、83%に新興住宅地があり、両地区では従来の地区分担制や家庭訪問による指導、キーパーソンの育成による地域づくりが十分機能していないことが分かった。保健師が役割意識を持って特定保健指導を行っていたのは、昔ながらの市街地55.9%、昔ながらの農山村39.0%であったのに対し、高層マンション地区では28.8%に過ぎなかった。新たな地域性に対応した保健活動はまだ十分に見つけられておらず、出先機関と本庁の保健師間の連携不十分などの組織的課題も明らかになり、今後は従来型の保健師活動をこのまま推進すべきかどうかの検討の必要性が示唆された。
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