研究課題/領域番号 |
25671029
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 天理医療大学 |
研究代表者 |
吉田 いつこ 天理医療大学, 医療学部, 講師 (90635088)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘルスプロモーション / ラオス人民共和国 / 国際協力 / エイズ教育 / 口承文化 |
研究概要 |
途上国におけるヘルスプロモーションの課題は、僻地に住む教育機会に恵まれない貧困層の人々をいかに巻き込み、都市部の富裕層との格差を縮小するかということである。ラオスも同様の問題を抱えており、これまで、歌や演劇などの娯楽を活用した教育手法が試みられてきた。しかし、そのほとんどがメディア開発や効果評価において健康教育に関連した理論やモデルを用いて実施されていない。 本研究の目的は、ラオスの伝統的民謡「ラム」をコミュニケーション媒体として社会認知理論に基づいた教材を開発し、健康教育を実施・評価することで、ラオスにおける実現可能なヘルスプロモーションモデルを構築し、その効果を検証することである。 そのために、開発した教材で健康教育を実施する介入群と文字媒体を使った教材で健康教育を実施する対照群を比較し、健康識字能力及び対象者間の情報伝達、社会規範の形成の差を検証する。また、対象者の教材に対する評価と健康識字能力、情報伝達、社会規範の形成との関連を検証する。さらに、量的には測定できない事象を把握するために、対象者からの語りや記述内容を質的に分析、構造化し、評価モデルに新たな項目を加えたモデルを構築する。 本研究の意義は、ラオスの文化に根付いき、実現可能で持続的なヘルスプロモーションモデル構築へ貢献することである。「ラム」は口承文化を維持するラオス人のコミュニケーション形態に適した媒体であり、文字を使わないことから、教育機会に恵まれなかった貧困層の人々へ健康のメッセージを伝達することが可能となる。本研究の成果は、ラオスのみならず、口承文化を維持する他の民族にも展開することが可能であると考えられ、本研究で得られた知見を国内外のヘルスプロモーションに携わる関係者に広く紹介することは学術的意義が大きいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目の平成25年度は、研究協力機関であるラオス国立公衆衛生研究所を通じて保健省倫理審査委員会からの承認を得て、研究フィールドの開拓および伝統的民謡「ラム」を活用した教育メディア開発を行ってきた。研究フィールドは、当初、村落を対象とすることを考えていたが、データ収集が困難であり、十分なデータ数を確保できない可能性があることから、研究協力者の助言でラオス国立大学の学生を対象とすることとした。そのため、ラオス国立大学学長からの承認を得る手続きを取らなければならず、大学生を対象としてアンケート調査を実施することは1年目にはできなかった。メディア開発は、ラオス国内でも高名な伝統的民謡歌手とその一座から協力を得て、順調に進んでいる。また健康教育の効果を測定するための調査票は、英語からラオス語への翻訳、翻訳されたラオス語から英語への翻訳を行い、現地でのプレテストを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目である平成26年度は、エイズ教育開発した教材を実際に大学生に視聴してもらい、その効果を評価する。平成26年7月に参加者を募り、ベースラインサーベイを行う。介入は、大学の新年度が開始される9月に行い、その効果を評価するために、3か月後(平成26年12月)、6か月後(平成27年3月)に追跡調査を行う。 3年目には、介入9か月後(平成27年6月)に最後の追跡調査を行い、すべてのデータをまとめ、研究協力機関であるラオス国立公衆衛生研究所へ報告書の提出と関係者との意見交換会を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年3月に海外出張を執行したが、その出張経費の総額が平成25年度の残高を上回ってしまったため、25年度分としては計上せず、26年度に清算することにしたため。 平成25年度に未使用であった金額を平成26年度の予算に繰り越し、平成26年度3月の出張費の清算にあてる。
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