研究課題
若手研究(A)
本研究の目的は(1)横断的研究による高次認知機能の個人差の神経基盤,(2)縦断的研究によるシャドーイングの訓練などの起こす高次認知機能と神経系の可塑性,(3)横断的研究による高次認知機能と神経系に影響を与える遺伝的基盤、(4)横断的疫学的研究による高次認知機能や神経系に関係する、環境因子、生活習慣、体内ミネラル量などの身体データの解明である。上記の研究目的を達成するために、研究期間内には、学生を対象としたシャドーイングやイメージトレーニングなどの認知訓練による縦断的研究などを行い、これまで蓄積したデータと合わせ、横断的解析を進めたりした。なお実験に際しては、東北大学医学研究科の倫理委員会で承認済みで、被験者からの同意を得てある。その結果多数の成果が得られたが、そのうちの(1)のテーマにかかわるものとしてはすでに分野を代表する査読付きの国際ジャーナルに出版済みか、出版が決まっている成果として、自閉症と関連していることが知られている共感性やシステム化傾向といった認知特性が脳の種々の領域の灰白質形態と関連していることを示した研究成果、(4)のテーマに関わるものとして、毛髪の鉄のレベルと創造性と関わる心理特性との関連を示した研究成果をが得られた。高次認知機能はいうまでもなく人間の知的活動、社会活動、文化活動の中心にあり、また統合失調症をはじめ多くの精神疾患で損なわれているものもある。高次認知機能の神経基盤、高次認知機能の可塑性を示すこと、その可塑性の神経基盤・遺伝的基盤について明らかにすることは、科学的にだけでなくその社会的・臨床的インパクトは大変大きいものであると考える。
2: おおむね順調に進展している
イメージトレーニングに関する縦断研究を60名程度に対して行い、シャドーイングの認知訓練に関する縦断研究を120名程度に対して行った。これらの被験者に予定されたMRI撮像、認知機能検査、質問紙による種々の評価、生体データの取得を行った。研究計画としては右利きの健常な大学生を被験者として募り、(a)縦断的な介入研究(全60名程度)を行い、その前後で(b)MRI撮像と(c)認知機能の評価を行う。そして、その介入前に(d)遺伝子多型の評価、(e)生活習慣、環境因子に関する質問表、(f)身体データの収集を行う。(g)体内ミネラル量の測定を行う。また、介入を行わず(b)(c)(d)(e)(f)(g)だけのデータを収集する(h)横断的研究(全150名程度)も行うということだったので、研究計画と同規模の実験を行うことができた。研究成果を論文にし、査読付き国際ジャーナルに順次投稿している。ただ、公刊が決まったものは上記のようにまだまだ多くない。
平成26年度の研究計画は平成25年度の研究計画と下記の点を除いて同じである。(a)縦断的介入研究の内容として(a1)のかわりに以下のものを含む。(a2)注意分割課題の訓練、訓練方法はコンピュータを用いた強化適応的訓練で、被験者のパフォーマンスに応じて難易度を調節し、被験者のできるギリギリの難易度のレベルの課題を持続的に行わせる。また、空間認知を多く利用するビデオゲームを用いた認知訓練、血液を採取して縦断横断的に血液から測定されるエピジェネティクスや、遺伝子発現、タンパク指標といった試料の採取や解析も同時に研究を行うことも検討されている段階である。またこの年度にはそれまで得られたデータを用いてそれぞれの目的のための解析を行った結果の研究成果の発表に努める予定である。実験被験者からは十分な説明をして同意を得て実験を行う。
縦断研究の規模が大きくなった一方、横断研究のみの実験がなくなるなど実験が予定されたものから変更があったため。また、データ入力などのデータ処理がいまだ完了していないものが多いためそのための謝金が減るなど予定から変更があった。翌年度の縦断研究の規模がもともとの予定より大きくなる予定でありそのための被験者謝金として使われる。また、これまで入力されてないデータも翌年度に入力するため、その分の謝金として使われる。
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