研究課題/領域番号 |
25700013
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
高橋 康介 中京大学, 心理学部, 准教授 (80606682)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知科学 / 認知心理学 / 生き物らしさ / アニマシー |
研究実績の概要 |
全体の概要として本年度は主に【A】知的・情的生き物らしさのマッピングについては、引きつづき行動実験を実施しつつ、昨年度までに得られた結果を国内外の学会で発表した。【B】の行動変容については、比較的等質な実験参加者サンプルを大量に検討できるという研究機関の特性を活かして、本格的な個人差相関研究を実施した。ここではパレイドリア現象を取り入れ、各種性格指標や生き物らしさ感受性との相関を検討している。70人程度のサンプルから、意味のある指標を見出すべく解析を行っており、次年度には結果を公表できる見通しである。【C】の工学応用については、急速に世の中に普及が進みつつあるVR技術を取り入れて、生き物らしさの認知がVR空間にどのような影響をもたらすかと言った点についての予備的検討を進めた。【D】の神経基盤の検討については新たに脳波計測を用いた研究の検討を進めた。本年度より研究代表者が研究機関を異動したことにより、使用できる実験機材などに変更が生じ、質の高い脳波計測が可能な環境となった。これに伴い、研究期間を1年延長することで、より質の高い脳波研究を実施することとして、研究計画を一部変更した。 アウトリーチ活動として、認知心理学会、VR心理学研究会、認知科学会分科会他、多数の招待講演を行った。これは「生き物らしさ認知」に関する昨年度までの研究成果が、新しい認知研究のテーマとして多くの研究者の興味を引いたためであると考えている。今後も研究者、一般の人々問わず、新しい認知の概念を提唱し、アウトリーチ活動を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの進捗状況として、【A】知的・情的生き物らしさのマッピングについては各種行動実験、研究成果の論文発表、多数の招待講演など、当初の想定以上に研究が進んでいる。特に、研究自体の進捗に加えて、「生き物らしさ認知」に関する研究成果が、新しい認知研究のテーマとして多くの研究者に受け入れつつあることは特筆すべき点である。【B】の行動変容については、視覚探索を利用した行動変容の実験を実施して、論文を執筆中である。加えて、比較的等質な実験参加者サンプルを大量に検討できるという研究機関の特性を活かして、本格的な個人差相関研究を実施した。ここではパレイドリア現象を取り入れ、各種性格指標や生き物らしさ感受性との相関を検討している。70人程度のサンプルから、意味のある指標を見出すべく解析を行っており、今後結果を公表できる見通しである。【C】の工学応用については、VR技術に代表される工学的応用技術の急速な進歩の中で、少しでも意義ある成果を出すためにさまざまな手法を検討している。直近では、HMDを利用したVR空間内での生き物らしさについての予備的検討などを行っており、今後の発展が見込まれる。【D】の神経基盤の検討については、研究代表者が研究機関を異動したことにより、使用できる実験機材などに変更が生じ、これに伴い、研究期間を1年延長することで、より質の高い脳波研究を実施することとして、研究計画を一部変更した。 アウトリーチ活動として、シンポジウムの開催や多数の招待講演など、研究開始当初はマイナーだった「生き物らしさ認知」というテーマがある程度認知されてきたことを感じる。研究の進捗に関しては、【A】が当初の計画以上、【B】が計画通り、【C】【D】が計画修正中、アウトリーチに関しては計画以上、ということで全体としては計画通りのレベルにあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、1年間の延長期間として研究成果の取りまとめ及び実験研究の実施をすすめる。【A】知的・情的生き物らしさのマッピングについては、実験研究の知見自体は多数得られているので、未公表の研究成果の論文発表及びアウトリーチ活動を勧める。個別の実験研究の公表だけでなく、「生き物らしさ認知」という枠組みで、研究期間中に得られた知見をまとめるとともに、レビュー論文の執筆を計画している。なお発展として2017年9月に行われる認知科学会でオーガナイズドセッション(「過剰に意味を創り出す認知:ホモ・クオリタスとしての人間理解へ向けて」)の開催が決定している。【B】の行動変容については、行動変容実験(視覚探索研究)の論文化をすすめるとともに、パレイドリア現象を取り入れて各種性格指標や生き物らしさ感受性との相関を検討した個人差相関研究について70人程度のサンプルからの解析を終了させて、学会発表または論文において結果を公表することを計画している。【C】の工学応用については、VR技術に焦点を当てて、HMDを利用したVR空間内での生き物らしさについての実験研究を実施し、今後の研究の展開の基礎とする。【D】の神経基盤の検討については、研究期間を1年延長することで、高い脳波研究を実施することとする。特に、SSVEP(定常状態視覚誘発電位)を用いて生き物らしさに応答する脳活動を検出することを目指す。 以上の4テーマの研究を最終的には有機的に結びつけ、「生き物らしさの認知」という過程を研究することの意義を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)研究代表者の異動に伴い、実験研究のための環境整備に時間を要したため。(2)研究代表者の異動先の施設を本研究補助事業において有効活用するために、脳波研究の導入を行うため。特に(2)に関しては、研究計画にも記載した神経基盤研究の一端となる可能性があるものの、異動初年度(昨年度)に実験系の確立に至るまでの準備期間はとれなかった。昨年度から本年度上半期にかけて実験施設稼働に向けての準備を終えつつあり、本研究補助事業の最後のピースとして脳波研究を実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
実験研究の実施と研究成果発表を行う。実験研究では、前年までの行動実験の結果をまとめて、パレイドリア現象と個人差に関する追加実験を行う。また、神経基盤の研究として、所属機関の研究者との連携の中で、アニマシー検出に関する神経基盤を脳波研究から探る。脳波研究は新しく導入するが、脳波計自体は導入済みであり、施設内で稼働実績もある。これまでの研究補助事業の中の知見を踏まえて脳波に最適な実験刺激、実験系を確立し、脳波実験を実施する。適宜、研究成果の学会・論文発表を行う。
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