研究課題/領域番号 |
25700020
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
梶本 裕之 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (80361541)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / ユーザインタフェース / 電気刺激 / インピーダンス / 触覚 |
研究実績の概要 |
平成27年度は電気刺激による多点刺激の応用を完結させ,力覚提示に関して原理検証を行った.第一に,スマートフォンへの応用を念頭に,画面上の操作する指と異なる指に触覚を提示するシステムに関して,より詳細な実験を行った.実験は,操作指が利き手の指であるか否か,触覚を提示する指が利き手の指か否か,という合計4条件で行い,認識に要する時間と正確性を調べた.この結果,利き手か否かにかかわらず,片手で操作と認識を行うほうが正確性は向上し,作業時間も低減することが示された.これは運動と認識を脳の片側半球に留めるという意味で自然な結果であるといえる.さらにより複雑な図形,動く物体,ギターの弦のアニメーションなどを表示するデモシステムを作成した. 力覚提示に関しては,研究者がこれまでに提案してきた腱への電気刺激による力感覚の生起を詳細に検討した.従来の電気刺激による力覚提示は多くの場合筋肉の活動を生じさせることでその筋力自体を感じさせるものであるが,今回はあえて腱の部分を電気刺激することで,腱近傍に存在すると思われる深部受容器を刺激することを狙った.実験の結果,確かに力覚を生じること,手首付近への刺激の場合に最大で250g程度の力を感じることが明らかとなった.またこのとき生起する力感覚の方向は,筋刺激で生じる力の方向とは逆方向であり,このことからも筋刺激による現象でないことは確認された.一方で本刺激が,はたして深部受容器,特にゴルジ腱器官の刺激によるものなのか,あるいは皮膚感覚を刺激することによる一種の錯誤現象なのかは明らかとなっていない.今後はこれを明らかにするとともに,前半部と融合した触覚,力覚融合提示を実現する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では平成27年度は,電気刺激による触覚提示を完成させ,電気刺激による力覚提示を開始する予定であった.概ねこの通りに進んでおり,今後触覚提示に関しては他の予算による実応用研究に譲り,力覚提示を中心として研究を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,これまでに見出した肘部の腱器官を刺激することで実際には動いていないにもかかわらず変位が知覚されるという現象を中心に応用を図る.本現象は現在のところゴルジ腱器官による力感覚なのか,皮膚刺激による擬似力覚なのかが判然としていないため,腱器官を刺激した場合にのみ生じる反射や,皮膚刺激を振動などによって鈍麻させる効果の検証などによって関与する受容器を明らかにする. また本年度は最終年度であるため,応用に関しても検討する.これまでに生成した力覚提示と皮膚感覚提示の融合を試み,視覚系も含めたバーチャルリアリティのセットアップ中での臨場感向上を定量評価する.また皮膚感覚提示において特に実用が近いと考えられる携帯機器裏面における感覚提示に関して実応用事例を増やしていく.
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