本研究では,自他認知から心の理論に至る社会的認知機能の発達メカニズムを,構成的アプローチから探求した.多様な認知機能の発達を統一的に説明する原理として,感覚・運動信号の予測学習に基づく理論を提案し,神経回路モデルや確率モデルを用いた計算論的モデルの構築と,ロボットを用いた実験によりその有効性を確認した.自己の経験を通した予測器の獲得とそれを適用した他者との相互作用により,運動生成と理解の共発達,予測誤差最小化に基づく利他的行動の創発,そして空間的予測学習に基づく情動認識・生成機能の獲得が再現されることを示した.これらの成果は,人間の認知発達原理の解明に重要な示唆を与えている.
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