研究実績の概要 |
本研究課題では、大規模な生物データから、生物-環境相互作用の抽出と定量化を可能にするための解析基盤を確立させ、応用する。 本年度は、以下のような実績をあげた。昨年度構築したネットワーク構造と可制御性についての理論が論文として公開された(Takemoto & Akutsu, 2016)。生態系ネットワークの大規模データセットを構築し、人間活動や気候変動が地球規模で生態系ネットワークに影響を与えていることを示した(Takemoto & Kajihara, 2016)。構築したデータセットを利用し、Petoのパラドクス(なぜ大きな動物のがん発症率は予想されるよりも低いのか)にひとつの解決を与えた(Takemoto et al., 2016)。これまでに積み上げてきた、地理データ分析、ゲノム解析、統計分析の手法を応用して、哺乳類における生息域多様性とゲノムの関係を調査し、 エキソソームは哺乳類の生息範囲拡大に貢献していることを見出した(Takemoto & Imoto, 2017)。 その他、構築した理論を応用して、個別ゲノムやメタゲノムの代謝機能ポテンシャルを評価する手法において、機能モジュールの充足性についての統計的評価法を開発した(Takami et al., 2016)。構築したネットワーク分析の手法を応用し、蝶の食草選択の大規模調査を行なった(Muto-Fujita et al., 2017)。 研究のまとめとして以下のようなことを行なった。これまでに整理した微生物の生理・代謝(生育温度、酸素要求性、栄養要求性など)のデータをデータベースとして公開した(http://takemoto08.bio.kyutech.ac.jp/mipmet/)。これまでの理論を統合させ、本研究課題の目的を達成した。特に、細菌叢解析の結果から、代謝ネットワーク分析を用いて微生物生態系構造を可視化するツール ECOSMOS を公開し(http://takemoto08.bio.kyutech.ac.jp/ecosmos-lite/)、実験医学増刊で紹介した(竹本, 2017)。
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