研究課題/領域番号 |
25700032
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松尾 豊 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30358014)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウェブコンピューティング / ゲーミフィケーション / 人工知能 |
研究実績の概要 |
Facebook やTwitter などの、世界規模のウェブ上のサービスが米国を基点に次々と産まれている。一方で、国内からはこういったサービスを産み出せていない。本研究では、多くの人に使われるウェブ上のサービスに関して、ユーザログやユーザの関係性等の大量データ(ビッグデータ)を分析し、ユーザを動機づけるためのゲーミフィケーションの理論構築を行う。ウェブ上のサービスに関するビッグデータの分析、および理論を検証するためのサービスの構築の2つの面から研究を進める。 これまで、前者に関しては、Crunchbase上でのデータ分析を行ってきた。また、後者に関しては、ウェブサイトにおける最適化という観点から理論化と方法論の構築を進め、実際にウェブサービスにおいて検証を行った。研究の発展性を鑑みて、後者のウェブサイトにおける最適化に関して、重点的に進めていく方向で進めている。 27年度は、ウェブサイトの最適化において重点的に研究を進め、データマイニングのトップ国際会議であるKDD2015で発表を行った。さらに、短期的なKPI、長期的なKPIの相関を調べ、それによって、どのKPIを用いるのが適切かを判別する手法についても構築した。さらには、デザインを一部自動で生成・変更できる仕組みを考案し、その最適化を行うことのできる手法を提案した。こういった一連の手法について国際会議への投稿を行った。 また、数多くのウェブサイトの最適化を行っている企業と連携し、そこが管理するデータを活用し研究を行うことができるようになった。少しずつ本手法の適用を進めている状況であり、産業界からの評価も高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、27年度には、26年度に引き続き、データ分析の手法を整理し、サービスを分析することで得られた知見を、順次分析していくことで、意図していた設計ができているかどうかをフィードバックする予定であった。 それに対して、ウェブサイトの最適化という方法の構築を継続的に行い、今年度は短期的なKPI、長期的なKPIを設計するというところも含めて、研究が進展している。トップ国際会議であるKDD2015にフルペーパーで採録され、またジャーナル論文にも採録されるなど、すでに大きな成果を収めている。企業との連携、されに大規模なデータの活用まで進められており、当初の予定を大きく超えて進捗している。 ウェブページ最適化では一部の機能やデザインを変更したパターンを用意し、それらにランダムにユーザを振り分ける。そしてユーザの反応を計測して比較を行い、最もパフォーマンスの高いパターンを探索する。しかし対象となるウェブサイトの訪問者数が少ない場合は、パターンを評価するのに十分なデータが集まるまでに時間がかかってしまうという問題がある。それに対し、KPIをどのように選ぶか、特にフィードバックの早いKPIと遅いKPIの相関をどのように捉えるか、それによって、長期的なKPIをどのように短期的なKPIで置き換えることが可能かという議論を行い、そのための手法を構築した。複数のサイトに対しての導入実験を行い、提案アルゴリズムの有効性を評価し論文にまとめた。さらには、ウェブサイトのボタン等のパーツに対して、複数の属性で記述しそれを最適化するような枠組みも新たに提案し、論文にまとめている段階である。 本研究は、ウェブサイトの最適化を行っている企業からも非常に高く評価されている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗は当初の予定以上に進んでおり、最終年度も、基本的には当初の予定にしたがって行う。 これまでのところ、特に、ウェブサイトの分析と構築の両方を含んだ、ウェブサイトの最適化アルゴリズム技術の研究が予想以上に進んでおり、またそのインパクトも大きく、それをさらに発展させる。企業との連携により多数のサイトのデータを活用することができる状況にあるので、さまざまなサイトにどのように適用できるのかを見ていく。また、この技術を拡張して捉え、例えばデザインや製造業といった他の分野にどのように適用できるのかも検証する。すでにデザインの一部に関しては成果が得られつつあるが、それをさらに発展させる。これは、当初から本研究の潜在的なインパクトとして想定していたものであるが、それをより具体的な形で進めたいと考えている。 引き続き、学術的な知見は、WWW、ISWC, AAAI, IJCAI, KDD 等の国際会議に継続して成果を発信していくことを目標とし、また、欧米のみならず、アジア圏での成長著しいシンガポール大学等との連携を深めながら、国際的な共同研究の関係を構築する。企業との連携もさらに積極的に進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
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次年度使用額の使用計画 |
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