研究課題/領域番号 |
25700033
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
馬 強 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (30415856)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 情報補完 / ニュースアプリ / ソーシャルトレード / エキスパート / オブジェクトリンケージ / 生活圏推定 / 穴場 / ユーザ挙動分析 |
研究実績の概要 |
本研究は人物・地域・組織などの実世界エンティティに関する情報を分析し,それに基づく情報補完分析の基盤技術の確立を目的としております.H26年度では,以下の項目について研究開発を行いました. (1)エンティティマイニングとその応用システム: (a) バイアスフリーニュース閲覧システム:H25年度に開発したエンティティ指向のニュース記事ランキング手法の改善を行い,詳細・観点・カーバレッジの三つの差異ランキング尺度を開発しました.Crowd-sourcingサービスを利用して不特定多数のユーザによる実証実験を行い,これらの尺度の妥当性と有用性を検証しました.さらに,これらの尺度を用いたバイアスフリーニュースアプリについて検討し,その為の再ランキング手法の開発と検証を行いました. (b) ソーシャルトレードサービスにおけるエキスパートトレーダの発見:近年脚光浴びているソーシャルトレードサービスを対象に,トレーダの挙動や取引履歴を分析して,より信頼性の高い,安定して利益を上げているエキスパートトレーダの発見手法について研究開発を行い,実際のサービスのデータを用いてシミュレーションを行い,提案手法の検証を行いました. (c) 複合オブジェクトのリンケージ手法:H25年度の成果を踏まえ,複合オブジェクトのリンケージを定式化して,その高速計算手法を開発し,検証を行いました. (2)地域情報のマイニング:Twitterなどで発信される日常生活に役立つ情報を発見するための情報源である地域ユーザの発見手法について研究開発を行っています.「いつ」,「どこ」,「なに」を発信したかを考慮して,ユーザの生活圏を推定する手法について研究開発を行っています.同時に,ジオタグ付きの写真を対象に,確率モデルを用いた撮影者の挙動をモデル化する手法を提案し,場所の人気度と観光価値の推定手法の改良を行いました.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度までは,ニュース記事やUGCなどのテキスト情報からエンティティに関する記述情報の特定およびそれに基づく差異分析手法について研究開発を行っています.また,画像などのマルチメディアコンテンツとそのメタデータを対象に地域の特徴に関する分析手法を開発しております.これらの基盤技術を用いて,応用システムとして,バイアスフリーのニュース閲覧システムや穴場観光スポットの探索システムなどのプロトタイプシステムの作成を行っています.さらに,Crowd-sourcingサービスやフィールド調査などを行って提案手法の有効性と有用性を検証しています.H26年度では,査読付き国際論文5本,国内会議論文4本,国内展示1件といった成果をあげており,研究の進捗は順調であると考えられます.
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今後の研究の推進方策 |
H26年度までの研究成果を踏まえて,提案手法の検証,改良およびプロトタイプシステムの実装を進めていきます.また,Crowd-sourcingサービスや試作システムを用いて,実証実験を行い,開発した手法の有効性と有用性を確かめながら,その改善を図ります.得られた成果を,国際的に著名な学会や学術雑誌に投稿し,積極的に研究成果を発信します.具体的に,以下の項目について研究開発を行います. (1) バイアスフリーニュースアプリの開発:今までの成果を踏まえて,バランスよく情報にアクセス出来る,モバイル端末用のニュースアプリの研究開発を進めます.開発したアプリを10名程度のユーザに3ヶ月程度に利用してもらい,その利用履歴を収集・分析して,開発したシステムの有効性および有用性を検証します. (2) ソーシャルトレードサービスにおけるエキスパートトレーダーを発見:Deep Learningを利用した手法も検討しながら,H26年度の提案手法の改善を行います.また,開発手法の評価方法についても検討していきます. (3) 情報補完指向のニュース俯瞰システムの開発:今までに検討してきた素材意見対モデルの実現手法について研究開発を行い,ニュース報道の典型性,補完関係を分析して,ニュース報道の全貌やその由来を理解出来るシステムの開発を進めます. (4) 地域知のマイニング:TwitterやFlickerなどに発信されているUGCを対象に,ユーザモビリティ分析とそれに基づく地域生活圏の推定手法について研究開発を行い,地域やユーザの多様性を考慮した地域知の発見と共有の仕組みについて研究開発を行います.さらに,その地域医療への応用について検討します.
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次年度使用額が生じた理由 |
利用するサービスの仕様変更などがあり,Crowd-sourcingサービスを利用した実証実験の実施手法の再検討が必要となりました.また,研究発表や参加予定の学会の一部変更がありました.
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次年度使用額の使用計画 |
Crowd-sourcingサービス,試作プロトタイプシステムおよびフィールド調査などを利活用して実証実験を実施して,その成果を著名な学会と学術雑誌へ投稿して,成果公開および国内外研究者との積極的な意見交流を推進します.
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