本年度は、震災後に申請者が行ってきた現在までの調査を踏まえ、風評被害についての国際比較アンケート調査を実施した。事故直後から現在に至るまで、福島県以外においても海外からのインバウンドの旅行客や国内製造業の輸出、農林水産物の輸出に関して大きな被害をうけてきた。福島原発事故の経済的影響に関して市場の動態を確認するとともに、この放射性物質への不安感や原発事故に対する認識、その後の消費行動、時間とともに回復してきている度合などについて国際比較調査を行った。これは、現在、どの機関も行っていないが風評被害を学術的に総体的多面的に捉える上で必須の調査である。 中国、韓国、台湾、シンガポール、ロシア、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツにおいて、20歳以上の男女各国300サンプル、性年代均等割付調査をインターネット調査にて実施した。なお、東アジア諸国のサンプルを多く確保したのは、特に近隣の東アジア諸国において、福島原発事故を理由として福島県産のみならず東日本産の拒否がいまだ続いている現状があるからである。 結果、海外においては地理的な理解も十分でないこと、農産物のみならず、水産物また飲料水や旅行の対象(空間線量)としても不安感が高いこと、それは福島県に限らず、日本全体への不安感と回答している人が多いことなどが明かとなった。 なお、本年はこれに加え、過去の調査の延長線上として福島県産の農産物についての調査を福島大学と実施するとともに、昨年度までの事業所調査、給食事業者調査についての研究発表などを実施した。
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