研究課題/領域番号 |
25700036
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浜中 雅俊 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30451686)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 意味構造解析 / 再利用 / 音楽分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は,要約,簡約,編曲など,これまで音楽家が楽譜に対して行ってきた工事の音楽操作を,一般ユーザが音楽音響信号に対して操作可能にすることである.既にミックスダウンされた曲の一部にユーザが変更を加えたいと考えた場合,ミックスダウン前のパート別に分かれたトラックを入手して加工を行った後に,再度ミックスダウンを行えばよいが,現実には2つの問題がある.まず,パート別のトラックを入手することは困難である.また,音楽初心者は自分の望むとおりに加工を行うことは困難である.そこで本研究の目的は,ミックスダウン後の音楽音響信号に対して高次の音楽的操作を適用可能にするための基盤的な枠組みを確立することである.本年度は以下の4つの項目を実施した. (a,b)ポリフォニの音響信号に対応したGTTM分析器の構築: 26年度に構築したポリフォニに対応したGTTM分析器について,複数の音楽家が分析に使用した結果に基づき問題点の改善を行った.その結果,これまでの分析器の性能をはるかに超えた分析器σGTTMIIIを構築した. (c) 正解データの蓄積: 26年度に確率した,ポリフォニ版GTTMの基本的な分析方法に基づき,音楽家の分析を収集した.基本的な分析方法で分析が困難となった曲についても,分析困難な事例として収集して,事例が複数集まった時点で分析方法の再検討を行うことで,分析可能とした. (d) 音楽操作を自動で蓄積する手法の構築: 音楽家の操作事例を収集し,操作前の曲と操作後の曲の両方の構造を分析することで,操作内容をタイムスパン木の演算に点かいすることを可能とした.得られた演算をデーターベースに蓄積可能とした. (e) ユーザインタフェイスの構築 26年度に設計した,入力コンテンツの構造分析を行い,ユーザの位置に対応した演算の組み合わせを検索し適用するためのユーザインタフェースの実装を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々が世界で初めて音楽理論GTTMに基づく音楽分析器ATTAを構築したのは2003年であるが,それから10年を経て,ATTAをはるかに超える性能の音楽分析器σGTTMIIが構築された.そして本年度さらにその性能を超える分析器σGTTMIIIを実現した.σGTTMIIIは,σGTTMやσGTTMIIと異なり,確率文脈自由文法(PCFG)を用いて,タイムスパン木を求めることが可能である.ATTAの最大の問題は,タイムスパン木の獲得の精度が低いことであったため,σGTTMIIIの実現は,これまでに構築してきたメロディモーフィング手法などタイムスパン木を用いた音楽システムの実用化を促進することが期待される. データベースの構築も順調に進んでおり,昨年度からは多くの論文で分析データベースが用いられるようになってきた.データベースの拡充は多くの研究者から期待されており,次年度も引き続き力をいれてゆく.
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今後の研究の推進方策 |
予定を上回るペースで進展しており,次年度も計画通り推進してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
音楽分析を依頼した音楽家の体調不良により人件費が予定より少なくなってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度、分析を加速するとともに、必要に応じて増員することで予定通り進行させる。
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