高次の音楽操作を,一般ユーザが可能になることを目指し,音楽理論GTTM(Generative Theory of Tonal Music)の計算機実装を進めてきた.我々はこれまで音楽理論GTTMに基づくメロディモーフィング手法などを提案してきたが,手法を利用するためには楽曲をGTTMに基づき分析した結果が必要であった.本年度は, ディープラーニング(深層学習)に基づくが楽曲分析器を構築した.具体的には,GTTMにおける局所的グルーピング境界の検出と拍節構造の検出とをディープラーニングを用いて実現した.しかし,入力楽曲とグルーピング境界あるいは拍節構造との関係をディープラーニングで学習しようとしても学習は困難であった.音楽理論は,音楽家の音楽知識を体系したもので,GTTMではそれがルール化しているため,我々はまず1つ1つのルールを深層ネットワークに学習させることにした.楽曲の表層的な構造と,1つ1つのルールの適用結果の関係は比較的単純であることから,ルールの学習は成功した.そして,ルール学習済みのネットワークに局所的グルーピング境界の学習をさせたところ,学習に成功した.これは,深層ネットワークに音楽理論で定義されているルールを学習させることで,ネットワークが賢くなった(知能化された)と考えることができる.なお,これらの成果は,SMC2016(13th Sound and Music Computing Conference)およびCMMR2016(12th International Symposium on Compute Music Multidisciplinary Research)に採択され発表を行った.本年度はGTTMのグルーピング構造分析および拍節構造分析の実装をティ―プラーニングで実現したが,今後,それより後段の分析であるタイムスパン簡約およびプロロンゲーション簡約をディープラーニングで達成していく.
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