研究課題/領域番号 |
25701001
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中山 智喜 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (40377784)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境変動 / 気候変動 / 環境分析 |
研究概要 |
自動車排ガス中の粒子には、黒色炭素粒子と有機物粒子が含まれると考えられる。黒色炭素粒子は、有機物成分に被覆されると被覆物がレンズとして働き、黒色炭素粒子による光吸収量が増加すると考えられている(レンズ効果)。また、有機物粒子も特に短波長可視から紫外領域において、光吸収性を有する可能性があるが、これまで有機物粒子の光学特性について調べた例はほとんどなく、特に、排ガス中の気体の揮発性有機化合物の酸化過程により二次生成する二次有機エアロゾルの光学特性に関しては、研究例が全くなかった。そこで、本研究では、自動車排ガス中に含まれるエアロゾル(元素状炭素、有機炭素)および、二次有機エアロゾルの光学特性を明らかにすることを目指している。 今年度には、実験に使用する光学特性計測装置の性能試験を終えた。また、3波長光音響分光装置を用いて、ディーゼル排ガス中の粒子の光吸収特性に関する室内実験を実施した。実験は、市街地でのディーゼル車の走行を想定した「過渡走行モード(JE05)」と、車両を一定の速度で走行させる「等速走行モード(アイドリングおよび時速70 km)」の2種類の条件で行い、排出された粒子の光吸収および光散乱係数の波長依存性を得た。 その結果、いずれの走行条件においてもレンズ効果による黒色炭素粒子の光吸収の増加は確認できなかった。黒色炭素粒子と有機物粒子が外部混合していることが光吸収の増加が見られなかった主な要因であると考えられる。一方、有機物粒子の光吸収は、「過渡走行モード」の高速走行時(時速80km)において観測され、高速走行時には、波長405nmにおけるエアロゾルの全光吸収の20%程度の寄与を持つことが判明した。特に、加速終了時および減速開始時に有機成分の排出が増加することが、「過渡走行モード」においてのみ有機物粒子による光吸収が観測された要因となったことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、測定に使用する装置の性能評価や、エアロゾル計測システムの準備も終えることができた。また、ディーゼル車から排出されたエアロゾル粒子の光学特性に関する測定を実施し、結果の解析をほぼ終えることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、自動車から排出された排ガス中の黒色炭素粒子や有機物粒子だけでなく、排出された気体の有機物の酸化過程で生成する二次有機エアロゾルの光学特性について調べる予定である。また、ディーゼル排ガスに加え、ガソリン車から排出される粒子や気体成分からの二次生成粒子の光学特性についても調べる予定である。二次生成粒子については、オゾンによる酸化やOHラジカルによる酸化など、酸化過程が生成した粒子の光学特性にどのような影響を及ぼすかについても詳細に調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
国立環境研究所(つくば市)で実施する予定であった室内実験を次年度に行うことになったため、次年度使用額が生じた。 次年度に国立環境研究所(つくば市)において実験を実施して、旅費及び消耗品費、装置輸送のために費用として使用する予定である。
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