研究課題
本研究では、自動車排ガス中に含まれるエアロゾル(元素状炭素、有機炭素)および、自動車排ガス起源の二次生成エアロゾルの光学特性を明らかにすることを目指している。本年度は、前年度までに実施したディーゼルエンジン単体および、従来のディーゼル車、クリーンディーゼル車、ガソリン車(直噴型エンジン搭載車およびポート噴射型エンジン搭載車)をシャシーダイナモ施設で過渡運転走行させた際に排出された排ガス中の粒子および、排ガスにオゾンを添加したり、紫外光を照射したりすることで二次的に生成した粒子の光学特性の測定データを解析した。その結果、ガソリン車の排ガスに、オゾンを添加もしくは紫外光を照射した場合、揮発性有機化合物の酸化により生成する二次有機エアロゾル(SOA)と同程度の硝酸アンモニウム粒子が二次生成することが判明した。生成した硝酸アンモニウムは、SOAと同様にブラックカーボン粒子(BC)を被覆し、レンズとして働くことで、BC粒子の光吸収効率を増加させることが判明した。また、クリーンディーゼル車から排出された揮発性有機化合物の光酸化反応で生成するSOAは、短波長可視から紫外領域に有意な光吸収を持つのに対し、オゾン酸化反応で生成したSOAは、有意な光吸収性を持たないことが判明した。また、国立環境研究所と共同で、夏季に川崎市の産業道路沿道で、自動車排ガス起源のエアロゾル粒子の実大気観測を実施した。観測では、光音響分光装置を用いて、粒子の光吸収および光散乱特性の波長依存性のリアルタイム測定を行うとともに、有機物や無機塩によるBC粒子の被覆に関する情報を得るため、微分型静電分級器とエアロゾル質量分級装置を組み合わせ、エアロゾル粒子の有効密度分布のリアルタイム測定を実施した。
3: やや遅れている
室内実験で得られたデータの解析を進め、様々なタイプの車両から排出された粒子や、害ガスの酸化により生成した二次粒子の光学特性に関する新たな知見を得ることができた。また、研究の目的をより精緻に達成するために、実大気観測を実施し、有益な情報を得ることができた。一方、室内実験で得られた成果をまとめた論文発表を進める予定であったが、解析データの解釈に時間を要したため、成果の公表に遅れが生じた。実大気観測で得られたデータ解析を追加で行うとともに、得られた成果の発表を行うため、事業期間を1年延長することとした。
今後、これまでに室内実験で得られた様々なタイプの車両から排出された粒子や、排ガスの後続酸化により生成した二次粒子の光学特性データを他の特性と比較した結果について、まとめ、成果発表を行う予定である。また、研究の目的をより精緻に達成するために実施した実大気観測データの解析を行うとともに、得られた成果の発表を行う。
予定していた論文投稿の一部を次年度に行うことにしたため、次年度使用額が生じた。
成果のとりまとめのための打ち合わせ旅費および、論文掲載・学会発表費用として使用する予定である。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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