研究課題
平成27年度は,有孔虫を用いた絶対環境指標の構築に向けた研究成果と共に,新たに魚類の耳石・有孔虫・岩石・海水の同位体組成に関わる複数の共同研究も開始し,国内外の需要に応えつつ研究を進めた.耳石の研究では高精度マイクロミルシステムGeomill326を活用し,回遊経路が未知のマイワシ個体の耳石を成長段階ごとに切削・回収し,それらの安定同位体比からマイワシの回遊履歴全体を高解像度で再現できるかどうかについて検討した.1歳魚と推定される千葉県産マイワシの耳石を成長段階ごとに詳細に切削し安定同位体比を測定した.成長輪に沿った切削は幅30マイクロメートル前後,最大深度100マイクロメートルでおこなった.回収したサンプル量はそれぞれ0.6~5.5マイクログラムであった.分析の結果,成長段階によって安定同位体組成が明瞭に変動することを確認でき,このマイワシ耳石の同位体比の変動幅から北西太平洋を回遊する群集であることが推測された.そこで回遊経路を照合したところ,黒潮から混合域,そして親潮へ移動した情報が耳石に明瞭に記録されており,実際の回遊経路とも整合性があることが示された.これらの結果から,Geomill326とMICAL3cを組み合わせた微小領域における炭酸塩の安定同位体比分析は,今後の高解像度環境解析に有効に活用できることを裏付けた.分析限界の制限要因としては,サンプリング技術の要素も大きく,今後はより正確に成長輪にそって耳石を切削すること,そして,切削深度や切削に用いるサンプルの選定について検討する必要がある.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Repports
巻: 6 ページ: -
10.1038/srep22701
水産海洋研究
巻: 80 ページ: 48-55
Paleontological Research
巻: - ページ: -
10.2517/2015PR036
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