研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、亜硝酸および硝酸をそれぞれ別々に用いたリアクターで嫌気性メタン酸化脱窒微生物の培養を継続し、基質中の微量元素濃度を変化させ培養への影響を評価し、最適な培養条件の検討を行った。本年度は昨年度までの銅に加え,Fe,Zn,Co,Mn,Ni,Se等の微量元素と酸化還元酵素であるピロロキノリンキノン (PQQ) ,ビタミンが与える脱窒速度への影響の調査を行った。実験の結果PQQは銅と同様に亜硝酸の嫌気的メタン酸化脱窒反応を促進することと,硝酸の嫌気的メタン酸化脱窒反応において,硝酸から亜硝酸への脱窒反応が律速段階であることが示唆された. また、本年度はより実プロセスに近い大型の密閉型DHSリアクターを作成し、ガス供給量や排ガスの組成などの分析も実施できる装置で実験を行った。実験は少量の汚泥職種しか行わなかったものの運転開始60日後,亜硝酸と硝酸の消費が確認された.窒素消費速度の値は亜硝酸で0.34±0.13 mmol/l/day,硝酸で0.13±0.093 mmol/l/dayとなった.排出ガス中には亜酸化窒素は検出されなかったがメタンが残存していたことから、ガス供給量についてはさらなる最適化が必要であった。蛍光in situ ハイブリダイゼーション法により培養95日目の汚泥の観察を行った.本実験は嫌気性メタン酸化脱窒微生物であるM.oxyfera,M.nitroreducensを標的として微生物観察を行った.実験の結果より,リアクター内には嫌気性メタン酸化脱窒微生物であるM.oxyfera,M,nitroreducensの両方が存在していることが判明した.以上の事より,DHSリアクター内での脱窒反応は嫌気性メタン酸化脱窒微生物によると示唆されDHSリアクターによる嫌気性メタン酸化脱窒微生物の培養は可能であることが証明された.
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