本年度の研究においては、グラフェンの高付加価値化を目的とした、ゲルクロマトグラフィ法による構造分離を実施した。 界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の2 wt%水溶液中にて、等量の未処理カーボンナノファイバーと酸化カーボンナノファイバーを超音波処理により剥離し作成したグラフェン・酸化グラフェン(GO)混合分散液を、多段ゲルクロマトグラフィにより分離を行った。その結果、カラム段数の増加に伴い得られたピークの半値幅が小さくなり2Dバンド強度が増加していることが確認された。さらに、XPSより各段を通過したグラフェン・GOに含まれるO原子の割合を算出したところ、分離前では27.7 at%であったが、カラム通過に伴い減少していき3段通過後は15.7 at%となった。これらのことから、酸化度の低いグラフェンが選択的にゲルカラムを通過していることが示唆された。 この結果と前年度までに得られた結果を考えると、近年の単層カーボンナノチューブのカイラリティ分離メカニズムの報告と同様に、酸化状態に依存した分離がグラフェン系でも生じていると考えられる。酸素官能基密度が高いGOや、酸素官能基が導入されやすいエッジ構造を多く有するシートサイズの小さなグラフェンが、ゲルへの高い吸着優先度を示したと考えられる。 以上より、本研究では多段カラムゲルクロマトグラフィを用いることでグラフェンの酸化度、シートサイズによる分離が可能であることを提示した。今後界面活性剤やゲルカラムの最適化により、様々な手法で量産されたグラフェンの目的構造分離への展開が期待される。
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