燃料電池の高耐久性化に向けた理想的反応場の確立のために、3年間を通して①電極触媒設計と材料プロセシング工学:カーボンのナノ構造制御と電極触媒の創成、②電極触媒の固体電気化学:Ptとナノカーボン接合界面の電子・イオン伝導性の特性評価、③燃料電池設計工学:高耐久性燃料電池の試作・開発と実作動条件下での評価、④電気化学デバイス工学:関連する電気化学デバイスへの新規電極触媒の応用について検討した。H27年度分のみ以下に示す。①電極触媒設計と材料プロセシング工学:H26年度中に完了 ②電極触媒の固体電気化学:燃料電池セルにした形で、電流電圧応答測定およびインピーダンス測定を行うことで各種過電圧を分離し、活性化過電圧に着目し評価した。カーボン表面の結晶化度を向上することで、またカーボンナノファイバーを添加することで、活性化過電圧が低下し、つまり、電子伝導性が向上したことを示した。 ③燃料電池設計工学:ナノ構造を制御した電極触媒を用いて燃料電池セルを作製した。プロトン伝導体のナフィオンイオノマーをナノ空間内に導入する点で、より疎水性であるヘキサフルオロプロパノールに分散し更にドライアッププロセスを用いることで、燃料電池セル作製の最適化に成功した。10nmと20nmのナノ空間の効果を比較すると、20nm空間のほうが、特に高電流密度領域で高い発電性能を示した。一方で、Pt劣化における耐久性に関しては、10nmの空間においてより効果が表れた。 ④電気化学デバイス工学:カーボンの2000℃までの高温焼成により、水電解セルへの適応を試みたが、カーボン酸化に対する効果はあるものの、2V程度の電圧には長時間は耐えられないことが分かった。水素純度センサー材料への適用も試みたが、ナノ空間内で不純物が濃縮されることで微量のCOを検出できる一方で、センサー機能として重要な反応応答性(時間)が低下することが分かった。
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