研究課題
これまでに、葉酸やビタミンD、食事パターンと抑うつ症状との関連を報告したが、抑うつは自記式調査票を用いて評価しているため課題が残る。そこで、うつ病との関連において注目されている脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factof: BDNF)の血中濃度を測定し、食事・栄養因子とBDNFとの関連について検討を行う。関東地区の某企業2事業所において、平成24年および25年に定期健康診断にあわせて栄養疫学調査を実施し、生活習慣および食事に関する調査、採血を行い、約2200名が調査に参加した。平成25年度に参加者の約半数の血液検体よりBDNFおよびproBDNFを測定、平成26年度に残りの検体のBDNFおよびproBDNFの測定を完了した。BDNFを用いた解析は次年度に予定している。本年度は、食事調査票より得られた食品・栄養素摂取量より、ミネラル(マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛)摂取とCetner of Epidemiologic Studies Depression Scaleを用いて評価した抑うつ症状との関連を検討した。その結果、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛の摂取が多いほど抑うつ症状が少ない傾向であった。ミネラルの各摂取量が最も多い群では最も少ない群に比べて抑うつ症状のオッズ比は、マグネシウム37%、カルシウム36%、鉄41%、亜鉛37%低かった。その他、本年度は、平成24年に調査を行った事業所において平成27年に追跡調査を予定しており、そのための事業所との調整、調査票等の作成・準備を行った。今後は、ベースライン調査および追跡調査のデータを用いて食品や栄養素摂取と抑うつ症状との縦断的関連を明らかにし、さらに、抑うつ症状は血中のバイオマーカーを用いて検討する。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度には、平成24年および25年に実施した栄養疫学調査より得られた血液検体を用いてBDNFおよびproBDNF濃度の測定を完了した。当初の予定通り、平成27年度に、平成24年に調査を行った事業所で追跡調査を行うため、事業所との調整、調査票等の作成や準備を行った。平成24年の調査の際に、事業所産業医および調査参加者には、3年後に追跡調査を行う旨を説明し同意は既に得ているため、円滑に進めることができると予想される。BDNFの測定に時間がかかったため、当初予定していたBDNFと食事・栄養要因および食事パターンとの関連については未解析である。現在は、BDNF以外のデータを用いて、食事・栄養素摂取量と抑うつ症状との関連について解析を行っている。
平成24年および25年に栄養疫学調査に参加した全対象者のBDNFおよびproBDNF濃度の測定が完了したため、解析用データセットを作成し、血中BDNFおよびproBDNF濃度と食事・栄養要因および食事パターンとの関連について解析を行う。平成24年に栄養疫学調査を行った事業所では、平成27年度に追跡調査を行う。ベースライン(平成24年)および追跡(平成27年)の両調査から得られたデータを用いて、血中BDNF濃度と抑うつとの関連について解析を行う。さらに、うつ病高リスク者を検出するためのBDNFカットオフ値を検討する。
BDNFおよびproBDNFの測定費を当初予定した金額よりも抑えることができたため、次年度使用額が若干増えた。
平成28年度に1事業所で追跡調査を予定しているため、その準備(調査票作成など)に使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件)
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