研究課題/領域番号 |
25702016
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館 |
研究代表者 |
福井 幸太郎 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館, その他部局等, その他 (10450165)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 氷河 / 流動 / ボーリング / 立山連峰 / 剱岳 / 気泡 / 雪渓 |
研究概要 |
2012年4月、立山の御前沢(ごぜんざわ)雪渓、剱岳の三ノ窓雪渓、小窓雪渓が国内初の現存する氷河であるとした論文が日本雪氷学会誌「雪氷」に発表され、立山連峰に氷河が現存することが学術的に認められた。氷河が形成されないとされていた温暖な地域である立山連峰で氷河が確認されたことは、日本唯一の貴重な存在であるのみならず、その特性が世界的に注目されている。平成25年度に行った観測結果の概要を以下に示す。 ・三ノ窓氷河で、日本の氷河としては初めて深度20mに達するボーリング調査を行った。また、御前沢氷河では深度7mのボーリング調査を行った。各氷河の内部構造として、上部に数mの積雪(フィルン)層が存在し、最初の汚れ層(年層)付近から急激に氷河氷に遷移することがわかった。また、それ以深の氷層は、気泡氷、クリアーバンド、汚れ層が互層となっていた。 ・三ノ窓氷河では深度5m、御前沢氷河では深度0.6mで積雪(フィルン)が急激に氷河氷に変化していることを、コアサンプルの密度測定から定量的に明らかにできた。また、両氷河とも、昨年秋の汚れ層より上部で氷化が確認されたことから、氷化過程の進行が世界の氷河と比較して格段に速いことが確かめられた。また、深度12.5m以下で気泡の伸長が顕著になることが確認され、この氷河に内部流動が生じていることが示唆された。 ・池ノ谷右俣雪渓では、2013年秋期の観測で42日間で20cm前後の有意な流動が観測された。氷体の厚さは最大で40mに達することから、現存する氷河である可能性が高い。 ・内蔵助雪渓では、アイスレーダー観測により、現在でも塑性変形可能な厚さ30mの氷河氷が存在することを確認できた。また、751日間で31cmの有意な流動が観測された。1年間に換算すると約15cmと流動速度は小さいものの、内蔵助雪渓も氷河である可能性が高くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・三ノ窓氷河で、日本の氷河としては初めて深度20mに達するボーリングに成功した。三ノ窓氷河はアプローチ困難で、氷河表面が急傾斜なため、ボーリングの成功には数年かかると予想していたが、研究開始初年度で掘削に成功し、氷河氷の物性(密度、粒径、気泡の伸長)に関して基礎的なデータを入手できた。 ・御前沢氷河では、深度7mに達するボーリングに成功した。御前沢氷河でも深度20mを目指して掘削を行っていたが、ボーリングマシンのバレルが故障したため掘削深度が浅くなった。深度0.6m以下で密度から判断して氷河氷になっているなど氷河氷の物性(密度、粒径、気泡の伸長)に関しての基礎的なデータを入手できた。 ・池ノ谷右俣雪渓では、2013年秋期の観測で42日間で20cm前後の有意な流動が観測された。氷体の厚さは最大で40mに達することから、現存する氷河である可能性が高い。国内4番目、5番目の氷河として論文発表できる十分なデータが得られた。 ・内蔵助雪渓では、アイスレーダー観測により、現在でも塑性変形可能な厚さ30mの氷河氷が存在することを確認できた。また、751日間で31cmの有意な流動が観測された。1年間に換算すると約15cmと流動速度は小さいものの、内蔵助雪渓も氷河である可能性が高くなった。こちらも国内4番目、5番目の氷河として論文発表できる十分なデータが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
・国内4番目、5番目の氷河であると確率させるために、池ノ谷右俣雪渓と内蔵助雪渓の氷厚観測と流動観測の結果を論文として発表する。 ・御前沢氷河では、深度7mでボーリングマシンのバレルが故障した。より深い深度の情報を得るためバレルを改良したボーリングマシンで深度20~30mのボーリングを実施する。 ・三ノ窓氷河では、深度5m、御前沢氷河では深度0.6mで積雪(フィルン)が急激に氷河氷に変化していた。この急激な氷化過程を明らかにするために、御前沢氷河もしくは内蔵助雪渓で1ヶ月間隔でボーリング観測を実施して密度観測を実施する。 ・平成25年度は、海外の小型氷河(アルゼンチン、フェゴ島のマルティアル氷河)で氷厚や流動観測を行い国内の氷河との違いを明らかにする研究を予定していたが、カウンターパートの都合により実施できなかった。平成26年度以降、海外の小型氷河(マルティアル氷河もしくはブータンヒマラヤのガンジュラ氷河)で氷厚や流動観測を行い国内氷河との違いを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に海外の小型氷河(アルゼンチン、フェゴ島のマルティアル氷河)の観測を計画していたがカウンターパートの都合により平成26年度に延期になった。このため、平成25年度の研究代表者の旅費と同行予定の研究者の謝金と旅費の支出が無くなったため次年度使用額が生じた。 平成26年度は海外の小型氷河(アルゼンチン、フェゴ島のマルティアル氷河もしくはブータンヒマラヤのガンジュラ氷河)を予定している。これにかかる研究代表者の旅費と同行研究者の旅費・謝金に次年度使用額を使う予定である。
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