研究課題/領域番号 |
25702018
|
研究種目 |
若手研究(A)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
廣井 悠 名古屋大学, 減災連携研究センター, 准教授 (50456141)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 都市防災 / 避難行動 / 複合災害 |
研究概要 |
本研究は,複合災害時における人間の避難行動を分析することにより,避難ルールや誘導などの計画・政策に資する目的で行うものである.平成25年度は,(1)災害時の人間の移動・避難に関する基礎資料を整理するとともに(避難行動モデルの作成を含む),(2)本研究が主に分析対象とする都市圏などの広域エリアを対象とした流動シミュレーションの構築を行った.後者は特に,広域エリアで自動車と人間(徒歩)による避難・移動を扱う試みはこれまでにも事例が乏しいため,若干の追加作業を要した. 前者(1)については,研究代表者が行った東日本大震災時における帰宅困難者の行動に関する実データ,および原発避難者の移動に関する実データを分析し,共に避難行動モデルの作成を行った.帰宅困難者に関する避難行動モデルは多くの目的地が自宅であったことから,避難手段の選択をランダム効用理論に当てはめ,また原発避難に関する避難行動モデルについては,多くが自動車による避難であったことから,避難施設の選択をランダム効用理論であてはめ,避難地域の選択を空間相互作用モデルを用いる2段階のものとした.実際の大都市避難行動はそのすべてを考慮した,1.避難手段,2.避難先の施設種類,3.避難地域の選択,とう3段階の避難行動モデルになるものと推察する.意志決定は災害現象の進捗と共に変化するものと考えられるが,今年度の成果としては,上記の視点から避難行動を整理している. 他方で後者(2)については,広域エリアを対象とした人と車の流動シミュレーションを構築した(首都圏を対象とした).ここで東日本大震災時の実データを参考とした避難行動モデル(上記(1)の成果)を人口データなどの基礎データにあてはめ入力することで,2011年3月11日当日の状況を精度高く再現することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である基礎資料の整理(避難行動モデルの構築を含む)とシミュレーションの構築を初年度に行うことができたことにより,概ね順調な進捗と判断できる.
|
今後の研究の推進方策 |
構築したシミュレーションは人の移動(帰宅困難者の一斉帰宅を含む)について広域かつ複数手段(徒歩,車,滞留)に整理したものであり,いまだ複合災害時の避難行動を考えるための基礎的な想定条件に過ぎない.今後はこの成果に対して火災・津波・道路閉塞・液状化など各ハザードを入力することが必要となる.この点については,単純に被災状況を仮定して重ね合わせるのではなく,複合災害を整理するための何らかの工夫が必要となるものと考えるが,その実現は複合災害からの避難を考える上で根本的な課題となる.そのため,平成26年度の前半はこれらに対する資料収集を追加で行うこととする.その成果を生かし,本申請の平成26年度の課題である複合災害時の避難基準作成を目指すこととする.
|