研究課題/領域番号 |
25702020
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
勝山 正則 京都大学, グローバル生存学大学院連携ユニット, 准教授 (40425426)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ストロンチウム同位体比 / 滞留時間 / 溶存有機物 / 蛍光特性 / スケーリング / 基岩 |
研究実績の概要 |
1.ストロンチウム安定同位体比を用いた山地源流域の集水構造の解明、2.フロン類を用いた地下水の滞留時間の推定、および3.溶存有機物の光学特性を用いた質の評価と、その降雨時の変動について研究を進めた。 1.では花崗岩2流域における観測から、上流部で基岩内部に浸透した地下水が、比較的面積が小さい範囲(>10ha程度)で回収され、面積が拡大しても、小流域の合流のみで流量が説明できることが明らかになった。基岩地下水が表出する経路として、基岩の割れ目を通じて多量に湧出する基岩湧水に加え、露出した基岩面からじわじわとしみ出す基岩浸出水が量的に重要であることが示された。 2.では地形特性や地質が異なる複数の流域における観測から、地下水・湧水の滞留時間には、従来の研究で指摘されている地表面形状と滞留時間の関係性は明確ではなく、地下水流動の影響が強く表れていることが明らかになった。すなわち、個別の流域では基岩地下水の寄与の大きさ、基岩内部の地下水貯留量の大小が、滞留時間をコントロールしていた。ここから、渓流水の滞留時間決定機構の解明のためには、基岩への浸透・貯留・基岩からの流出のプロセスの強さに着目した観測を行うことが重要である。 3.では、溶存有機物の光学分析によって得られる質に関する様々な指標を用い、土壌水、地下水、渓流水と移動する過程における溶存有機物の質の変化と、流域間の降雨流出過程の違いがその質に与える影響とを考察した。流域内部で起こるDOCの質の変化は流域間で共通していたが、渓流水の流出に寄与する流出成分の違いに応じて、土壌水の影響が強く出る流域と地下水の影響が強く出る流域とに区別することができた。これは上記1,2の研究で示された流出経路および滞留時間の分布とも対応するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記2の研究は学術論文として投稿し、掲載が決定した。1,3の研究はそれぞれ、個別の学術論文として公表可能なレベルにあり、当該分野における重要な研究成果と位置づけることができる。1については2015年12月に国際学会にて発表済みであり、また3についても2016年6月の国際学会にて公表予定である。これらすべてはこの1年間に大きく進展した研究成果であり、当初計画以上の進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
上記1,3の研究をそれぞれ学術論文として公表を進める。また、1の研究についてはより事例を増やすため、これまで観測を行っていなかった流域を対象にサンプルを採取し、同様の考察を進める予定にしている。特に、地質の異なる流域を対象とすることで、これまで中心に行ってきた花崗岩流域との類似性あるいは相違点を明らかにする。3の研究については、事例を増やすと共により精度・時間分解能を高めるため、溶存有機物の蛍光特性自動観測センサーを導入した。このセンサーの導入は国内初の試みであり、高時間分解能のデータから、これまで確認が難しかった降雨時の変動について明らかにすることが可能になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部基金分を、年度の変わり目に切れ目なく研究を遂行するために残している。
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次年度使用額の使用計画 |
降雨時短時間間隔の水質観測を中心に進めるため、これまでの使用により性能の確認が進みつつある自動観測センサーの導入を進める。特に、多項目・多地点に展開するため、複数のセンサーを使用する。
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