研究課題/領域番号 |
25702021
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
近藤 民代 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50416400)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 住宅復興 / 広域巨大災害 / 不動産の移管と再生 / ハリケーン・カトリーナ災害 / 東日本大震災 / 自主住宅移転再建 / まだら住宅復興 / 居住地の移転 |
研究実績の概要 |
以下の2つの広域巨大災害を対象として住宅復興に関する研究を行った。 1.米国ハリケーン・カトリーナ災害 ハリケーン・カトリーナ災害10年時点における住宅再建調査(N=1500)を実施した。本調査は災害4年、5年、7年、8年、10年に継続的に行ってきたものであり、三地域における長期的な住宅ストック再生や土地利用管理とその格差が明らかになった。これらのデータは地理情報システムGISに一元化されているが、これをカトリーナ住宅再建記録集として紙媒体として取りまとめた。地域毎の格差がどのような因子によって影響を受けたかを明らかにするために、被災自治体ニューオリンズ市が運用している不動産の移管と再生を伴うプログラムの実績データを関係機関から入手し、その影響に関する分析を行った。 2. 東日本大震災 東日本大震災における自主住宅移転再建に着目し、岩手県および宮城県の沿岸9市町における被災者の意思決定プロセスと再建行動と同時に、新規着工建物の立地とそれによる市街地空間の形成と空間的特徴を明らかにした。これらの実態解明と分析の結果、①津波被災による個人単位の移転を伴う住宅再建が発生することを前提とした復興計画づくりとそれを絶えず見直すプランニングプロセス、②都市計画の手法である「事業」だけに依存しない自律的な住宅再建を「誘導」する都市計画の技術等の必要性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国ハリケーン・カトリーナ災害を対象とした調査研究で完了していない内容は以下の二点である。 1. 米国ハリケーン・カトリーナ災害において展開されている地域単位における放棄不動産の維持管理と解消、住宅修繕による住宅ストックの再生、それを契機にした生活関連施設の再開などに関する調査が完了していない。 2. 住宅再建調査を行っている地域を対象とした質問紙調査(N=1,088)を配布したが、回収がまだ完了していない。 東日本大震災を対象とした調査研究は、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.米国ハリケーン・カトリーナ災害:上記、「現在までの進捗状況」の1.で記述した内容に関する調査を実施する。地域住民組織と第三者の非営利組織が協働で地域を単位としてどのような復興まちづくり活動を展開し、それが地域の居住環境の再生にどのように寄与したかを明らかにする。これは災害4年から10年の住宅再建調査で明らかになった「まだら住宅復興」を低減する住宅復興モデルであると考えられ、その効果について分析を行う。次に災害4年から10年までの長期的な住宅ストックの再生および土地利用が地域毎にどのように異なり、その格差がどのような因子によって決定づけられたのかに関する分析を行う。具体的には平成28年度初旬に回収予定の質問紙調査(被災者の内的条件)と被災自治体が運用しているプログラムの影響力(被災者によっての外的条件)を統合して分析を行うことに依って、地域ごとの住宅ストック再生メカニズムを明らかにする。
2. 東日本大震災:平成27年までに行った自主住宅移転再建の調査は震災2年半の時点の状況であり、平成28年度には震災4年半時点の状況を調査する予定である。自主住宅移転再建者の時間軸による意思決定や再建行動の差異や、その立地の時空間的分布を明らかにすることによって、南海トラフ地震に向けた住宅復興の備えに関する検討を行う。
3. まとめ:本研究の申請時に仮説としていた「クラスタリング住宅復興」モデルの可能性と限界が昨年度までの調査研究で徐々に明らかになりつつある。前述したような2つの災害における長期的な住宅復興に関連するフィールド調査に基づいて、同モデルの改善を行い、将来の広域巨大災害に向けた望ましい住宅復興モデルを構築する。特にカトリーナ災害に関する論文としての公表が遅れているため、最終年度である平成28年度に集中的に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.米国ハリケーン・カトリーナ災害の被災市街地ニューオリンズ市三地域(N=1500)を対象とした質問紙調査の回収が平成27年度に完了しなかったため、その委託業務費用を支払うことができなかった。 2. 住宅再建調査の記録集のデータ作成は完了したが、印刷を平成27年度中に行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
1.平成28年度に質問紙調査の回収を確実に行い、その委託業務費用として使用する。 2.住宅再建調査の記録集の印刷費用として使用する。
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