研究課題/領域番号 |
25702022
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前田 英次郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20581614)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞間情報伝達 / 物質輸送 / ギャップジャンクション / 力学刺激 / 熱刺激 / メカノバイオロジー / バイオメカニクス |
研究概要 |
本研究は慢性的な腱の炎症的症状・腱炎の発症・慢性化メカニズムを医工学の観点から解明することを目指し,特にギャップ結合を介した細胞間コミュニケーション(GJIC)に注目し,過大な力学・熱刺激,またはその複合刺激によるGJICの変化と細胞異化作用や炎症反応の関係を調べることを目的とした. 今年度はまず,顕微鏡観察下での細胞周囲環境の精密な温度操作を可能にするための実験温度制御装置の開発を行った.PDMS製Microgroove実装実験デバイスに適切な温度の温水を通過させることで細胞培養部の温度を管理する方法を検討した.その結果,細胞培養部を生理的温度37度と,腱に過負荷が作用した際に上昇するとされる41度および43度に設定するための条件を決定することが出来た. つぎに,この装置を用いて,ウサギ・アキレス腱から単離した腱細胞の41度および43度における生存率を調べた.その結果,30分の温度処理では細胞の生存率はどちらの温度でも70~80%であった.一方,同様の処理を行うと,細胞異化作用や炎症反応のマーカーであるコラーゲン分解酵素(MMP1)の遺伝子発現が上昇することもわかった.このように,今年度は次年度以降の実験の条件設定に必要となる,腱細胞の基礎的な温度処理に対する応答のデータを蓄積した. また,今年度はGJICを可視化して定量的評価を行うFLIP実験を行う顕微鏡を装置を新たに導入した.LED光源を用いたニポウディスク式共焦点顕微鏡とレーザー光源を用いた光刺激法を組み合わせた. さらに,FLIP実験の数値解析に必要な,細胞間物質輸送現象の数理モデルについて,非定常拡散方程式に基づく数理モデルを新たに考案し,一度の解析で細胞間・細胞内の拡散係数を同定することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の進捗を鑑み,本研究課題は概ね順調に推移していると言える.FLIP実験を行う装置の細かなチューニングに時間を要しているが,その他の準備は順調に進んでいる.FLIP実験装置の設定が完了次第,本研究課題における核心的な事象についての検証を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後はFLIP実験を行い,力学・熱刺激による分子レベルでのGJICの変化を調べることに加え,カルシウムイオン濃度上昇の細胞間伝播の変化についても調べる.そして分子レベル・イオンレベルでのGJICの変化と,細胞異化作用および炎症反応との定量的な関係を検討する. 得られた結果については積極的に国内・国外の学会で発表すると共に,論文としてまとめ,投稿する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中で予定していた「その他」による支出が,年度当初の予想よりも小額で終わったため, 平成26,27年度と研究課題を推進するにあたって,「その他」での支出が相応しい経費については積極的に使用して行くほか,研究推進に当たって必要な物品の購入などにも弾力的に使用する.
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