研究課題/領域番号 |
25702024
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
合田 圭介 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70518696)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | がん / 高速イメージング / フローサイトメトリー / 循環腫瘍細胞 / CTC |
研究概要 |
日本の人口の高齢化により、医療費が拡大していくことが現在大きな問題となっている。特に最大の死因であるガンの診断及び治療には、MRI、CT、PET等の高価な医用画像処理診断が必要となるため、その費用は患者、そして国にとっても大きな経済的負担となる。近年、安価なガン診断方法として、循環腫瘍細胞(CTC)と呼ばれる原発腫瘍から分離して血液中を流れるガン細胞を、採血によって検出する手法の研究が進められている。しかし、CTCは血液1 mL中に10個程度と非常に稀少であり、数十万個ある他の血液細胞の中から1つを探さなければならないため、既存のフローサイトメーターではCTCの検出は困難であった。 そこで申請者は、STEAMと呼ばれる超高速光イメージング技術を元に、高いスループット及び精度で細胞のスクリーニングが可能なフローサイトメーターをUCLAにおいて開発した。そして、溶血した10 mLの血液から15分で乳ガン細胞を検出できることを実証した。 このフローサイトメーターを実際の臨床研究に用いるため、我々はUCLAでの装置を改良したものを東京大学で構築した。従来のSTEAMで用いていた通信波長(1550 nm)を、より高い分解能が得られる短波長(800 nm)に変更し、マイクロ流体チップも以前の光学軸方向の細胞の並びにズレが生じるものから、光学軸方向にも整列するデザインに変更した。そしてこの新しい装置で、0.5 m/sの速い流体中で直径15um程のマウスミエローマ細胞の画像を取得することに成功した。また、イメージングの特性を活かし、数百個のミエローマ細胞を断面積の大きさで統計を取ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STEAMフローサイトメーターに必要な光学系及びマイクロ流体デバイスのコンポーネントの組み立ては順調に進展した。光学系に関しては、申請者の専門であるため、東京大学において学生に直接指導することで、組み立てを行うことができた。一方マイクロ流体デバイスに関しては、UCLAのDino Di Carlo准教授のグループに学生1名を派遣し、その作製技術を取得させることで、STEAMフローサイトメーターに必要なマイクロ流体デバイスが東京大学で作製できるようになった。また、生物系の研究室において修士号を取得した技術補佐員の指導により、フローサイトメーターに流すマウスミエローマ細胞などの細胞株の培養も難なくこなすことができた。 しかし、昨年末から本研究室の実験室が存在する化学西館の改修工事が行われたため、引越しやインフラ整備に費用及び時間を費やされた。その上、同工事が予定より遅れてしまい、当初の想定より長い間仮の実験室で実験を行った結果、仮の実験室の環境が不十分であったため、STEAMフローサイトメーターの光源に用いていたフェムト秒レーザーが故障してしまい、復旧で遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
多数の血液細胞から稀少なCTCを短時間で検出するため、今後はより多数の細胞の画像をリアルタイムで処理できる系を構築する。まずは検出の部分にField Programmable Gate Array (FPGA)とGraphics Processing Unit (GPU)を組み込むことで、細胞の画像を取得すると同時に画像解析を可能にする。また、これらの処理系の導入と同時に、ガン細胞の細胞株を使用してガン細胞をイメージングで検出するプロトコルを開発する。 ガン細胞をリアルタイムで検出できる系を開発した後は、病院との共同研究でガン患者の血液を用いてCTC検出を行う。実際の血液中の細胞は、培養している細胞株とは異なるため、これまで構築したプロトコルをこの段階で最適化する。また同様に、様々な種類のガン腫瘍を持つ患者の血液サンプルを用いて更なる最適化を行い、CTCによるガン診断プロトコルの完成を目指す。
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