研究実績の概要 |
本研究の目的は、将来の非侵襲・迅速・低コストのガン検査に向けた、血液中の希少な循環腫瘍細胞(CTC)のリアルタイム検出を行う超高速自動光顕微鏡の開発である。この顕微鏡は、ヘテロな細胞集団(赤血球、白血球、CTCなど)を慣性力を用いたマイクロ流体デバイス内で細胞一つ一つを流し、STEAMカメラ[Nature (2009)]と呼ばれる独自の超高速イメージング技術でそれぞれの細胞を撮影し、同時に高速情報処理技術により獲得した画像をリアルタイムで分析・分類する技術である。 本研究期間中にこの装置の大半の開発に成功した。また、この装置の開発は、研究代表者が推進中の内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の「セレンディピティの計画的創出による新価値創造」プロジェクトに吸収され、本研究で予定していたスペックを凌駕する装置を現在開発中である。 具体的には、STEAMカメラを800 nmのTi:sapphire長短パルスレーザーをベースに構築し、700 nmの空間分解能と70 Mfpsのフレームレートを達成した。また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のDino Di Carlo准教授と協力して、マイクロ流体デバイスを完成させた。このデバイスは、流体の直角方向および光学軸方向での数umの精度で細胞の位置制御および高速整列化を可能とする。更に、千葉大学の下馬場准教授と協力して、Field Programmable Gate Array (FPGA)上でのアルゴリズムを開発し、STEAMカメラで撮影した細胞のリアルタイム画像構築に成功した。このシステム上で、流速1 m/sで流れる10 umのポリスチレンビーズとマウスのエミローマ細胞の統計データを獲得した。この流速はスループットでは20,000 cells/sに相当する(細胞間距離により値の範囲がある)。現在は東大病院と協力して臨床試験に向けた準備を行っている。 本研究に関する成果の発表は、2件の学会発表、1件のポスター発表、2件の論文発表を通じて行った。
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