研究課題/領域番号 |
25702025
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 康博 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (80442929)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞収縮 / 細胞間相互作用 / 形態形成 / 数理モデル |
研究概要 |
本課題では、形態形成における細胞集団の協調した細胞間相互作用について、細胞間に働く力をシグナル入力とするメカノフィードバック機構の役割を明らかにすることを目指している。本年度においては、初年度の計画に沿って、組織内に発生する力と組織形状との関連を解析することのできる数理モデルを構築した。本数理モデルを用いたシミュレーションにより、成長する球殻状上皮組織の形状変化と組織内に発生する力との関係性を検討した。その結果、細胞増殖により、組織内には細胞同士が押し合う圧縮力が発生するため、組織表面の形状は極めて乱れやすく、幾何学的には非一様曲率を有する凸凹面が生じやすいことが明らかになった。加えて、単層構造であった組織は、細胞配置換えが生じることにより多層構造に変化した。この多層化の起点となる細胞配置換えが生じる箇所は、組織の幾何学的な曲率の高い箇所と相関することが確認された。一方で、細胞の頂端面における能動的収縮(アピカル収縮)により、細胞増殖による表面形状の乱れは抑えられることがわかった。細胞増殖により、組織内の個々の細胞としては押し合いながらも、細胞頂端面においては互いに引っ張り合う力が発生することにより、組織の頂端面を滑らかに維持する役割を果たしていることがわかった。驚くことに、頂端面のみに作用する収縮力であるにもかかわらず、頂端面の平滑化によって基底膜側の表面形状も結果的に滑らかに維持されることがわかった。以上のように、組織スケールの形状変化と細胞スケールの力発生との関連について、数理モデルを用いて定量的に検討することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画通り、細胞動態から組織形成を解析する数理モデルの基礎を構築することができた。その成果として、組織変形における細胞の発生する収縮力と細胞増殖による圧縮力が重要であることが示唆された。これらにより、次年度からの力をシグナル入力とするメカノフィードバックの数理モデル化を行うことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者の実施する組織形成実験の最新結果(未発表)を共有し議論を続けており、当初計画通り、実験と数理の双方向の連携により、力をシグナル入力とするメカノフィードバック機構の役割について検討を続ける。
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