研究課題/領域番号 |
25702026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小関 泰之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60437374)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 誘導ラマン散乱 / 生体顕微鏡 / 生体観察 |
研究実績の概要 |
平成25年度までに、誘導ラマン散乱(SRS)分光顕微鏡システムの再現性向上を行い、わずかなスペクトルの違いの検出を可能とするシステムを実現した。平成26年度は、本SRS分光顕微鏡システムを用いて、さまざまな生体試料の観察を進めた。詳細はここでは触れられないが、マウス臓器切片中の脂質の組成分析、各種皮膚組織中の成分分析及び構造分析、種々のイオン水溶液のOH伸縮振動スペクトルの解析、各種微生物中の代謝物の成分分析を行った。その結果、いくつかの試料において、SRS顕微鏡が小さな分子の解析に有効であることを見出しており、現在、外部発表の準備を進めている。 並行して、SRS顕微鏡の実用性を高めるためのレーザー光源の開発も進めた。1um帯の利得スイッチ駆動半導体レーザーをSRS顕微鏡に適用する検討を行い、タイミングジッタの評価を行ったところ、4ピコ秒以下であることがわかり、さらに、外部光を注入することで1.5ピコ秒までジッタを低減できることがわかった。そこで、当該パルスをチタンサファイアレーザーパルスと同期させてSRSイメージングを試み、ポリマービーズのイメージングに成功している。また、分光イメージングシステムのさらなる小型化・実用性向上を目指し、新しい構成の波長可変・ピコ秒ファイバーレーザーを開発した。これまで我々が用いてきた波長可変レーザーは、広帯域発振するモード同期レーザーの出力光に対してスペクトルフィルタリングを施し光増幅を行っていた。今回、フィルタをレーザー内部に導入することで、波長可変発振の可能なファイバーレーザーが実現できることを示すことができた。 以上を通じて、SRS顕微鏡の応用とシステムの実用性向上に向けていくつかの成果を挙げることができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顕微鏡システムが順調に立ち上がり、他の研究室や企業との共同研究を通じて様々な生体試料中の脂質・水・多糖等の小さな分子をラベルフリーで可視化することに成功しつつある。また、当初計画には含まれていなかったが、新しい原理の光パルス発生法の検討とSRS顕微鏡への適用を進めることができ、最終年度までに、SRS顕微鏡の性能向上・実用性向上に本成果がつながっていくものと考えている。なお、当初計画では、細胞培養を整備することを計画していたが、近くに細胞培養の可能な研究室があり、そこの協力を得られることがわかったため、当該計画は実施せず、他の課題(光源開発等)を開始することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に得られた知見に関して、随時、外部公表を進めていく。また、平成25年度に引き続き、各種生体試料の観察を継続するとともに、SRS顕微鏡の実用性を高めるためのレーザー光源の開発にも注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養のための備品の導入を見送り、顕微鏡システムの開発と光源の研究に注力したため。
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次年度使用額の使用計画 |
SRS顕微鏡のための光源開発のための消耗品(光学部品、機構部品、電子回路等)の購入に充てる。
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