研究課題
平成25年度までに、誘導ラマン散乱(SRS)分光顕微鏡システムの再現性向上を行い、わずかなスペクトルの違いの検出を可能とするシステムを実現した。平成26年度は、本SRS分光顕微鏡システムを用いて、様々な生体試料の観察を進めた。平成27年度は、これらの観察実験をさらに推し進め、結果をまとめて論文投稿を行った。具体的には、各種皮膚組織中の成分分析及び構造分析を行い、皮膚組織中で種々の皮膚細胞を識別することに成功した。また、生きて動く微細藻類内部の代謝物を定量することに成功した。これらは、SRS顕微鏡が小さな分子の解析に有効であることを示す結果であると考えている。並行して、SRS顕微鏡の実用性を高めるためのレーザー光源の開発も引き続き進めた。平成26年度に開発した新しい高速波長可変レーザーの論文投稿を進めるとともに、より長期安定性を高めるために、9の字型レーザーを用いた波長可変レーザーの開発を行った。さらに、1 um帯の利得スイッチ駆動半導体レーザー(GS-LD)のSRS顕微鏡への適用可能性の検討を行い、ジッタ評価、タイミング安定化、生細胞観察実験を行い、GS-LDがSRS顕微鏡へ適用可能であることを示した。また、GS-LDのタイミングジッタがSRS信号へ与える影響を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
顕微鏡システムが順調に立ち上がり、様々な研究室や企業との共同研究を通じて、生体試料中の小さな分子をラベルフリーで可視化することに成功している。また、細胞培養系について平成26年度内の導入を見送っていたが、実験を進める中で、細胞培養系の整備がやはり重要であることを再認識し、平成27年度中に細胞培養系の導入を完了している。並行して、当初の計画には含まれていなかったが、新しい原理のパルス光源の検討を平成27年度からスタートしており、GS-LDや波長可変ピコ秒9の字レーザーなど、新しい光源の開発に成功した。本光源は、最終年度においてよりSRS顕微鏡応用に適したものとなるようチューニングを行う予定である。
平成27年度と同様に、様々な生体試料の観察を継続する。特に、顕微鏡システムの反射光学系の更なる最適化を行い、生体組織中の小さな分子のラベルフリー・in vivo/ex vivoイメージングを目指す。並行して、SRS顕微鏡の実用性をさらに向上させるための新しいパルス光源の検討を継続する。
平成27年度に入り、顕微鏡用自動ステージを新たに導入する必要が生じたが、その購入が年度内に間に合わなかったため。
平成28年度第一四半期に、顕微鏡用自動ステージを購入し、様々な試料の観察実験を継続する。それ以外の研究計画の変更はない。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 11件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
Optics Express
巻: 24 ページ: 9617-9628
10.1364/OE.24.009617
巻: 23 ページ: 15186-15194
10.1364/OE.23.015186
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