研究課題
本研究では、誘導ラマン散乱(SRS)分光顕微鏡という、2色のピコ秒パルスを用いて生体分子の分子振動を高感度に検出する独自の無染色生体観察技術を活用することで、様々な細胞や組織を生きたまま観察し、従来の染色法や標識法では解析の難しい、小さな分子の挙動と細胞や組織の関係を詳細に調べ、新しい情報を得ることを目的として研究を進めた。平成28年度は、これまで性能向上を図ってきたSRS分光顕微鏡システムを用いて、外部の研究室と連携しつつ、様々な細胞や植物・動物の観察実験を継続的に行い、脂肪滴やタンパク顆粒等の代謝物を無標識で可視化することに成功した。並行して、個体の計測において必須となる反射型検出のための光学系の改善を試み、信号対雑音比を1.5倍向上させることに成功した。また、昨年度までに得られた皮膚組織や微細藻類細胞内部の代謝物の可視化の成果について論文投稿を進めた。あわせて、SRS分光顕微鏡のさらなる実用性向上を目指し、これまで用いてきたチタンサファイアレーザや非線形偏波回転型ファイバレーザに代わる安定なレーザー光源の開発を進めた。いくつかのレーザ構成について検討を進め、偏波保持型Ybファイバーレーザー光源により広帯域なスペクトルを生成し、そのスペクトルを音響光学可変フィルタで切り出すという新規構成のパルス光源の開発に成功した。以上の結果から、本研究課題では、SRS分光顕微鏡の性能向上と新規応用の開拓を並行して進めるとともに、より実用性の高いレーザー光源の開発に成功し、高速・無標識生体イメージング法としてのSRS顕微法の可能性を大きく広げることができたと考える。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 6件、 招待講演 13件) 備考 (2件)
Optics Express
巻: 24 ページ: 9617-9628
10.1364/OE.24.009617
Nature Microbiology
巻: 1 ページ: 16124
10.1038/nmicrobiol.2016.124
Journal of Biomedical Optics
巻: 21 ページ: 086017
10.1117/1.JBO.21.8.086017
https://sites.google.com/site/ozekibp/
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/foe/press/setnws_20160802105732051679502063.html