研究課題/領域番号 |
25702027
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
仲井 正昭 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20431603)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生体用金属材料 / チタン合金 / 脊椎固定 / 変形誘起相変態 / オメガ相 / 疲労特性 |
研究実績の概要 |
脊椎固定器具に用いられる材料の特性として、患者側と医師側とで望まれる弾性率が異なり、患者に対しては骨類似の低弾性率、医師に対しては手術時の操作性が高まる高弾性率が求められる。このような弾性率に対する要求を両立させるため、変形誘起相変態を利用し、変形部のみ弾性率が上昇し、非変形部は低弾性率を示す金属(弾性率自己調整金属)を開発した。本研究では、この弾性率自己調整金属の金属製脊椎固定器具への応用について検討している。昨年度までに、代表的な弾性率自己調整金属であるTi-12Cr合金が、溶体化状態のβ型チタン合金としては極めて良好な疲労特性を示し、それが疲労試験中に形成されるω相によってもたらされる可能性があることを見出した。そこで、本年度は、実際にTi-12Cr合金を用いて脊椎固定器具を試作し、その耐久性評価を開始した。その結果、Ti-12Cr合金製脊椎固定器具の耐久性は、変形誘起相変態が生じない他のβ型チタン合金製脊椎固定器具に比べれば良好であったが、従来から実機に利用されているα+β型チタン合金製脊椎固定器具に比べて劣る結果となった。耐久性試験では、いずれの合金製脊椎固定器具においても、ほとんどの場合、スクリューとロッドの締結部で破壊することから、部品間の接触が耐久性に強く影響を及ぼしていると考えられる。そこで、Ti-12Cr合金製脊椎固定器具の表面改質処理についての検討を開始した。その結果、Ti-12Cr合金製脊椎固定器具では、表面近傍における局所的な変形誘起ω相の形成による大幅な表面改質の可能性が示唆される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画どおり、Ti-12Cr合金を用いた脊椎固定器具の試作を行い、その耐久性試験を実施した。耐久性試験の結果は改善の余地を残したが、表面改質による改善の目処も立っていることから、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、弾性率自己調整金属を用いて脊椎固定器具を試作し、その耐久性試験を実施する。ただし、本年度の実験結果として、そのままでは良好な耐久性が得られないことから、次年度は表面改質による耐久性の改善についての検討を行う。
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