本研究は、疾患に特有の微小環境に応答して遺伝子発現を制御できるシステムの構築により、幹細胞を利用した新規DDSシステムを目指す。平成26年度までにIkappaBとtetリプレッサーの融合タンパク質(R-IkB)を発現するベクター、および、tetリプレッサーが結合するtetO配列の下流にレポータータンパク質LacZを発現するベクターを作製し、R-IkBと共トランスフェクションした細胞にTNFalphaを添加すると、LacZの発現が誘導されることをXgal染色で確認した。本年度は、昨年度に引き続き、遺伝子発現制御の定量評価を目的に、transposonシステムを利用して、オペレーターとLacZを発現する細胞株を作製したが、数週間するとLacZの発現が定量限界になり、残念ながら細胞株は本研究期間内に完成しなかった。そこで、遺伝子発現の定量的は評価には、遺伝子導入試薬による一過性の発現をLacZの活性を発光で定量するシステムを利用した。遺伝子発現のon/offを経時的に観察することを目的に、蛍光タンパク質と発光タンパク質を融合させたBRETを利用したNano-lanternをレポーターとして発現するベクターを新たに構築した。TNFalphaを添加後、発現がonになることを発光イメージングで評価できた。さらに、遺伝子発現制御のメカニズムの確認を行った。R-IkBとLacZを発現するベクターを共トランスフェクションし、プロテアーゼ阻害剤lactacystinを添加した後にTNFalphaを添加した細胞におけるLacZ活性は、予めlactacystinを添加せずにTNFalphaを添加した細胞と比べて有意に低かった。TNFalphaの添加による遺伝子発現誘導にユビキチンプロテアソーム経路によるタンパク質の分解が関与することが示唆された。
|